隠居の独り言(936)

二枚目俳優・児玉清胃がんで77歳の早めの人生を終えた。自分とは同年配で
ダンディーなスタイルとスマートな語り口は男女を問わず中高年の憧れの存在は
温厚な性格なうえ内面からほとばしる薀蓄と教養の魅力に惚れ惚れとさせられた。
姿見の良さのみならず彼の読書歴は有名で学習院大学文学部でドイツ語科を選び
英独語に堪能で外国文学は原文で読むのが楽しみだったという。人に接するにも
自らの博識は外に出さず人には茶目っ気で気さくな人付き合いは人柄が忍ばれる。
その辺りのとても魅力的で熟年の紳士のダンディーは急に繕えられるものでない。
男の顔は人生の履歴書とも云えるが大卒後に俳優を志し東宝専属となったものの
仕出しとしてセリフのない通行人役が長く続き挫折を味わう下積み生活を体験し
その苦労の積み重ねが生涯を通じて素晴らしい男の点景を作りあげたのだろう。
最近見たのは昨年の大河ドラマ「竜馬伝」の竜馬役の福山雅治と演じた父親役で
武家の大黒柱の役目と家族への思い遣りのシーンは児玉清ならではの適役だった。
残念なのは娘さんが若くして胃がんで亡くされて無常の悲しみを経験されたのに
どうして自身の体をもっと早く検診されていなかったのか?肝臓や腎臓にがんが
転移するまで放置されていたとはとても残念だ。それでも愛娘と病気の苦しみを
共有するため胃カメラの検診は断られたというが身を持っての家族愛を示された。
ご本人の悔しさとともに、反面に充分に人生を全うされた喜びが伝わってくる。
病床で趣味の切り絵をなさっていたと聞くがせめてもの心の安らぎであったろう。
児玉清77年の生涯は、模範であり目標であったが大きな師匠を失った気がする。
惜しい人がまた逝った。冥福を祈る。