隠居の独り言(955)

豊臣秀吉岸谷五朗)の生涯を振り返ってみると三つのステーションに分かれる。
一つ目の幼少期は貧困の家庭に生まれ再婚の父とも上手くゆかず家を飛び出して
食べるために職業を転々と変えながら仕官の道を歩んだ期間は苦労の人生であり
二つ目は青年期から壮年期にかけての溌剌と活躍をした期間は知恵の人生であり
三つ目は晩年の時期に入ってからの訳の分からない迷走ぶりは痴呆の人生であり
これら三つの際立ったコントラストを持った英雄は古今東西に彼を除いていない。
常軌を逸した利休(石坂浩二)の切腹命令、壮大な失敗ともいうべき朝鮮侵略戦争、
甥の関白秀次(北村有起哉)の虐殺など、どうみても秀吉は晩節をひどく汚した。
その理由の一端は秀吉が長く後継者に恵まれず老年に至り、やっと嫡子が生まれ
最晩年の焦りと自らの死の予感と幼い子供への将来に対する不安との狭間の心が
あがき続けたのだろう。それに付き合わされた家来達の中には命や家族も奪われ
迷惑千万で気の毒であった。ましてや現代に至っても朝鮮の人から恨まれるのは
やりきれない。秀吉の評価は人によって違うが、その功罪は戦国期を終わらした
功の部分と、晩年の惨めな罪の部分で評価を大きく変えた歴史上の大人物だった。
大河ドラマ「江」は「利休切腹」で秀吉に切腹を命じられた利休は身柄を三千の
兵が囲む家に移されていた。 江(上野樹里)は止めさせようと秀吉に会いにいくが
相手にされない。それでも利休に会おうとする江の前に秀勝(AKIRA)が現れる。
2人は変装をして利休が捕らわれている屋敷にもぐり込み利休と対面を果たし、
江は、利休に生きてほしいと懇願するが…。