隠居の独り言(975)

家康(北大路欣也)が天下取りの野望を持ったのは本能寺の変で信長(豊川悦治)が
横死した時とされるが、家康の先手を打った秀吉(岸谷五朗)が明智光秀を撃破して
信長の後継者のパスポートを掌中にした。当時は政治手腕において秀吉は家康よりも
はるかに凌駕していたので秀吉に臣従して身の保全と地位を確保して次の天下取りを
待つしかなかった。そこで家康はハタと気付いた。単なる大名間の争いや戦術はなく
自らの健康に留意し秀吉よりも元気で長生きをして柿が熟するまで時期を待てばいい。
家康の優れた感覚は健康法を研究し自ら実践したことで神経質なほど健康管理には
鷹狩や水練などで身体を絶えない鍛錬して酒や美食を慎み節制した。家康の健康への
執着は計り知れないものがあり食事、運動、質素、そのうえ薬も自ら試して処方し、
秀吉との長生き競争が天下取りの道だと家康は信じ込み着実にそれを実践し始めた。
秀吉とは6歳下だが、それでも老人になれば寿命に関係無く普段の生活が左右する。
とかく不摂生だった秀吉に較べ家康は根本から健康法を実践したのが天も味方した。
慶長3年8月18日秀吉の最期を知った瞬間に家康の脳裏には「天下」の二文字が
浮かんだのは容易に想像できる。でもここは我慢の為所、急いてはことを仕損ずる。
今まで57年の苦難の前半生の戦国期を通じて条件が整わないままに無理押しすれば
結局は自滅することを熟知していた。その後の家康の行動の全ては権謀術数を用い
豊臣方の諸将や外様大名たちを二手に霍乱させその間に徳川の漁夫の利を得ようと
二度とない天下取りの絶好のチャンスに今までの外面での温厚な顔つきとは裏腹に
狡知に満ちた陰謀家と化し残り少ない人生を将軍への道に賭けた夜叉のようだった。
大河ドラマ「江」は、江戸での暮らしが始まった江(上野樹里)は、秀忠(向井理)との
2人目の子を妊娠した。「なんとしても嫡男を」とうるさい大姥局(加賀まりこ)に対し、江は男の子を産んでみせますと宣言してしまう。一方、京や大坂では秀吉亡き後の
政局を巡り家臣たちが動き始めていた。三成(萩原聖人)は家康の野望を阻止すべく、
豊臣ゆかりの武将たちに協力を求めるが…。