隠居の独り言(979)

歌手の小林幸子(57)が初めて結婚するという。加藤茶(68)も45歳下の女性と結婚し
俳優・寺田農(68)も33歳の女性と結ばれた。みなさま良いお歳でご同慶の至りだが
一昔前なら考えられない年寄りの結婚観は時代の流れが倫理観を変えたのかな?と
恋や愛に対する根本的な道徳面の錯覚なのかとヤッカミ半分で彼らに危うさを思う。
少し前なら老いらくの恋は人に話せるものでなく秘めた心の中のときめきだったが
今の老人は心身とも若くなったせいか好いた惚れたも直接的で愛情表現も変化した。
年寄りばかりでなく若い人の恋愛感情の変りかたは少子高齢化にも繋がっているが
生涯独身者の増加や、一般的に晩婚化、女性の初出産の年齢も大いに原因している。
相手の条件が高すぎて適齢期を逸している場合と仕事や遊興のため結婚をためらう。
小説や映画や音楽など大体が恋や愛をテーマにしてハニーな気分に包まれているが
実は恋愛ほど刹那的で誤解も多く愛情とは無縁の結合が多いのに男女は気付かない。
「思いやりのある人」「頼もしい人」を女性は求める。でもこれは欲しがるものでない。
優しさとは人に与えるもので自分が得ようとするものでないことを知るべきと思う。
自分が歯をくいしばり我慢をしながらも相手に与えるのが思いやりであり優しさだ。
同じ屋根の下で全てを晒しながら恋とは空虚で愛とは何であるかを身を持って知る。
昨今の離婚率は三分の一との統計だが、といって三分の二が幸せとは考えられない。
自分も若い時分を振り返れば多くの恋を経験してその殆どを失恋したことによって
人生の平穏が保たれている。失恋なくて何十人も引き連れて生きるわけにいかない。
失恋は一瞬のときめきで消えるのもあれば自己犠牲の極みでもがき苦しむ時もある。
つまり失恋の経験も意味も価値も心の悲しみも人を大きくする。今の若者は特有の
表現を持っているが大人から見ればそれはガキの遊戯でありガキの発情に過ぎない。
発情とは少々品がないが誰もが通った道程であって人間が動植物の本能と違うのは
そこに色を加えれば恋愛になり情を加えれば結婚になる。それでも誰もが色と情を
持ち合わせていないのでその誤解が二人の破綻を招く。要するに結婚は我慢であり、
お互いを認め合うのが長持ちの秘訣と長い結婚生活を続けている一老人の言葉としたい。