隠居の独り言(984)

今年も「敬老の日」がやってきた。敬老といっても65歳以上の老人の総人口に
占める率は約四分の一というから若い人から見れば至る所に老人がごろごろして
とても敬う気はしないだろう。しかも老人はスピードの早い社会に付いていけず
若い人から軽蔑こそすれ尊敬の念が湧いてこないのは当然だ。それはそれとして
2010年の世界の平均寿命ランキングでは日本人の平均寿命は男女平均の83歳で
何と加盟193カ国の内1位というからここは素直に喜ぼう。日本人と同じような
肉体を持つ東洋人諸国の中でも次の韓国が17位というから圧倒的に素晴らしい。
食事面で魚など水産物をよく食べる習慣や豆腐や納豆の摂取も多く野菜も豊富で
緑茶を飲むことも動脈硬化やガンの予防にも役立っているのだろう。生活習慣も
毎日風呂に入って身体を清潔にしているのも感染症予防にも役立っているはずで
これは医学的知識も無かった数百年に亘る昔からの日本的伝統の勝利ともいえる。
それに加えて全国で行われている高齢者のための定期健康診断や国民皆保険制の
医療システムが長寿に貢献している。このような恵まれた長寿社会を作り上げた
先哲の知恵と優しさに感謝しなければ日本の老人はバチが当たる。でも考えよう。
自分が生まれた頃は年寄りの健保も年金も無く子供は老いた親の面倒を見るのは
当然であり営々と続いた日本の家族の習慣で老いては子に従うのも慣例であった。
戦後の西欧の思想は核家族の自立観念で、そのために年金や健保が設けられたが
最近の少子高齢化傾向は加速度を増し10年後は老人が三分の一に達し若い人の
負担ではとても耐えきれない。既に年金や健保の制度が破綻寸前になっている。
今の老人は体力も知力もあり会社から60歳前後の定年とは早過ぎはしないか?
近い将来を考えれば、いっそ定年制度を廃止して自由に働きたいだけ働きながら
余生を楽しむ制度の知恵が考えられないか?会社から「戦力外通知」を宣告され
濡れ落ち葉とか粗大ゴミとか称され家族から疎外されるのはどこか間違っている。
社会の変化に対応できないのは企業戦士から脱落したから、ますます老いていく。
「敬老」なんて言葉は要らないし、平均寿命世界一も素直に喜んでいられない。