隠居の独り言(1023)

現代のご隠居さんは会社の定年後を指すが現役時代は家族のための働き蜂で
それが男の甲斐性と思ったが仕事を終えてサテ気が付くと何も残っていない。
僅かばかりの年金暮らしは趣味に没頭の余裕も無く世知辛い世間が許さない。
世の中が大河の淀みのように静かに流れていた時代では「横町のご隠居」は
経験を沢山積んだ知識人であり若い衆の八さん熊さんの尊敬する師であった。
現代の科学の急速な発達に老人は時代遅れで世間の早い波に乗れるどころか
却って社会の邪魔者扱いで付いていけないもどかしさが諦めの心の加速度を
強めてますます老若の考えの違いが広まっていく。老人が軽蔑される所以だ。
かくして書店には老人の生き方案内本がヤマと出ているが定年後の夫婦関係、
婦唱夫随の提唱、ボランティア活動、ガーデニング、旅行や趣味の薦めなど
老人文化は盛りだくさんのようでも昨今の政府の政策は切り捨て方向にある。
でもグチを言っても詮無い。誰もが娑婆を去るわけだからエンディングまで
心置きなく老後を存分に楽しみたい。まず歳を取ったら適当にキザになろう。
キザは漢字で気障と書くがどこか気に障る部分がある、つまり言い替えれば
可愛気となる。キザとは若さの象徴でもある反面、若い時のキザっぽいのは
鼻持ちにならないが、年寄りのキザにはお洒落心や心くすぐる可愛気になる。
ところが老人になると急に野暮ったくなるのは歳のせいにするがそうでない。
男は定年を機に新しい服に拘らなくなり女も化粧や服装に億劫になる傾向だ。
洋服を新調したとしても色も地味なオジサン・オバサン色に理没してしまう。
女性にも中高年柄というのがあってそれを着ていれば安心と思う人が多いが
却って老けて見える。老人も服を選ぶなら若者向けの売り場を見て回りたい。
明るく華やかな思いなら単色の無地がいい。とびきりきれいな色を選びたい。
男も女も歳を重ねるほどに服装はきりりとしよう。服装は見嗜みだけでなく
言葉や仕草も伴い人間性を豊かにする。人生は最後までかくありたいと願う。