隠居の独り言(1036)

人から好意やモノを頂いてお礼を言うのは当たり前だが報道によると東日本大震災
一周年追悼式典に震災の後に外国から最も多い義援金200億円を寄せてくれた台湾に
案内状すら出さない政府の非礼さは日本人の礼節を重んじる美徳を忘れてしまったか。
相手から受けた恩を仇で返すような恥ずべき行為は今では台湾との国交が無いといえ
常に中国の顔色を窺いながらの恥辱的外交に日本国家としての尊厳はどこへいったか。
台湾を代表する方を来賓席でなく一般席に案内する無礼さ!献花の際にも指名でなく
一般の参加者と同様の扱いにしたというから呆れる。国の立場を杓子定規に貫く前に
恩に報いるのは外交以前の守るべき徳目ではないか!台湾の人々に申し訳ないと思う。
むかしの日本人はモラルのいい加減な人間のことを「タガがゆるんだヤツ」と表現した。
国にしろ人にしろ近頃はタガのゆるんだ世間になったとつくづく思う。若者ばかりか
最近の中高年も人格形成のライフスタイルが変わったのか人から好意や物を頂いても
お礼の言葉も言えず返事のひとつも欠ける人物の多いのに時々気付く。人と会っても
ろくに挨拶の仕方も知らないのも、それを何とも感じていない人格の喪失が情けない。
むかしの後輩の朝は先輩より早く出勤して辺りを片付けてお茶を沸かして待っている。
後輩は先輩におはようございますと挨拶して一日の仕事が始まった。目上への礼儀や
人間関係はそのように代々引き継がれた。それが昭和40年代頃からぷっつり切れた。
後輩は先輩より遅く出勤しても何も言わない。言わないどころかいつも自分の都合で
物事をやっている。それは良いとか悪いとかでない。相手の立場や気持ちを察するのを
出来ないのは日常的に育った家庭の環境だろう。戦争中の厳しい環境で育った大人達は
せめて子供には苦労は掛けたくないと甘く育てた。甘く育った子供がやがて大人になり
甘い環境のまま次の世代へ継げばおのずと礼儀作法も変化するだろう。台湾への非礼も
お礼の欠如も美徳を忘れている根本は同じだ。人間関係も外交でも相手が強いものや
肩書を持つ人には、おべっかを使い、小さくもまともな人への思い遣りに欠けるのは
人間として醜いが、いつか自らに跳ね返るのは必至だ。礼節の意味を今一度考えたい。