隠居の独り言(1047)

大河「平清盛」は中々の意欲作と思うが視聴率がじり貧で自己ワースト更新中という。
ストーリーが複雑なうえ断片的で一本の筋に欠けているのと映像が今一のせいだろう。
もう一つ、大河ドラマは主役のキャスティングが美男美女でないと視聴率は影響大だ。
その点は以前の福山雅治、妻夫木総、内藤聖陽、上野樹里宮崎あおいは合格点だが
今回の松山ケンイチは役として特徴に欠ける。平清盛のイメージは独裁的な権力者で
朝廷も意のままにした強力な悪人を想像するが役者の迫るオーラが今一なのは淋しい。
平安時代後期は平成の今と同じように先の見通せない社会の閉塞感や人の信頼関係も
損なわれていた。そのうえ天候不順による農作物の不足から餓えに苦しむ庶民が多く
今と違って情報も薄い世の中では厭世観が蔓延し仏教の考えの「末法思想」が広まり
この世の終わりが近いと人々は恐れ天皇や公家達が出家遁世して生きる希望を失った。
森羅万象の原理に乏しい世間であれば病気や天候不順の出来事も神仏に祈るしか無い。
それに付け込んだのが仏教集団で現世の困難に悩む公家に「極楽に行きたければ仏教に
帰依し金銭や土地を寄進すべし」と極楽浄土を売りつけた。人の弱みに付け込む方法は
宗教という名の下に弱者を騙り本来の主旨とは正反対に不幸に貶める集団のいるのは
今も昔も変わらない。叡山、高野山興福寺などの寺院は詐欺的な手法で公家を勧誘し
寺社に極楽を買おうと莫大な資産を差し出した。まんまとせしめて財産が増えた寺社は
土地や金銭の管理に用心棒を雇い始める。それが僧兵という戦闘的集団の始まりだが
彼らは信心して傭兵になったわけでない。単なるあぶれ者で一本下駄を履きナギナタ
持てばそれだけで飯を食うことが出来た。五条の橋の上で源義経と戦って敗れ家来に
なった武蔵坊弁慶青木崇高)もそのうちの一人だった。僧兵は貴族の家来での平家や
源氏の武士との権力争いで混沌としてきたが様々な武力集団を束ねるのは誰なのか?
ドラマは高野山再建を成し遂げた清盛に安芸守の任が授けられ父・忠盛(中井貴一)も
念願の公卿まであと一歩となった。だが忠盛は病に倒れてしまう。一方藤原摂関家では
弟・頼長(山本耕史)と兄・忠通(堀部圭亮)の兄弟間での権力争いが激化し頼長は
源為義小日向文世)を使い忠通を襲撃する。忠通を支持する美福門院(松雪泰子)は
平氏を使って頼長を攻撃するように画策するが病気の忠盛を見舞いに来ていた清盛は、
その命令を拒否するように進言する。いよいよ保元の乱の前哨戦の火ぶたが切られる。