隠居の独り言(1070)

先月に陛下の従弟で「ひげの殿下」として知られ三笠宮寛仁さまが66歳の若さで
亡くなられた記憶も覚めやらずうちに、自分がとても好きだった尾崎紀世彦(69)が
この世を去った。豊かな声量とダイナミックな歌唱力と、日本人離れした顔立ちで
魅了した彼だっただけにとても悲しい。そして立て続けにお笑いの小野ヤスシ(72)や
俳優の地井武男(70)等の訃報を知ると、男にとっての命の節目というべき古希の峠を
越えられなかった悔しさはいかばかりだったか。運命的に身罷れた故人はさておき
先日に発表された健康白書によると男の健康寿命は70,42歳、女性は73,62歳とある。
健康寿命とは健康で普通に日常生活を送ることが可能な年月の期間だが亡くなる時の
平均寿命との差が男は約9年間、女は約12年間なので、その間は病気や衰弱などで
誰かの介護なしでは生きていけないことになる。つまり大半の男性は70歳位までは
身体的に人の世話にならずとも暮らしていけるが此の辺りを境に健康面が怪しくなる。
男性は「七十の老い坂」を如何に上手く登りきれるかによって其の後の人生が決まる。
不健康の入り口が70歳とすれば、せめて10年前から規則正しい生活に気を配りたい。
拙い経験では、腹八分目、休酒禁煙、小まめに体を動かす、適度な睡眠、これで充分!
「医者の不養生」という言葉があるが知識は豊富でも実践しなくてはなにもならない。
昔は男の厄年は42歳とされたが寿命が延びるとともに厄年もその分延びたのだろう。
人は病気になって初めて健康の有難味に気付くが、病気とは普段の生活の積み重ねで
煩悩の赴くままに生きるのは、やがて体に無理が来て不健康な生活を余儀なくされる。
人は必ず老いて、やがて死ぬ運命と分かっていても自分の立場になると、なかなかに
受け入れられないのは、この世の執着や死に対する不安、恐怖心を認めたくないからだ。
平安期の伊勢物語に「ついに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思わざりしを」
があるが、ついに行く道とは終着駅のことだが分かっていても、こんなに早く来るとは
思わなかったと驚いている。誰もが老いて安らかに人生を全うするには、どうすれば
いいのだろうか?老人の増加とともに、死に対する心の問題がますます増えるだろう。
たった一度の人生、大切にしなくては・・