隠居の独り言(1093)

彼岸に入って日本人の宗教観とキリスト教など一神教との違いを歴史から思う。
約9世紀以前のアルプス山脈以北のヨーロッパ大陸は奥深い森に覆われていた。
当時に住んでいたケルト族やゲルマン族の人々は深い森には精霊がいると信じ
樫、樅、楡などの巨木を神の宿なる樹として敬い信仰の対象としていたという。
その北ヨーロッパにアルプスを越えキリスト教がやってきた。神聖ローマ帝国
推し進めるヨーロッパ全体のキリスト教化の一環として抵抗する原住民は追われ
深い森林は次々とキリスト教の信者によって切り倒されていった。ゲルマン人
神聖な場所であった森は神に従わない悪魔の住む場所として徹底的に伐採された。
森が無くなったあとはキリスト教信者にとって最も快適な牧草地の景色になった。
童話の世界でもハリー・ポッターの物語も森は何か不気味な場所として登場する。
伐採された後の草原で羊や牛を飼い広大な土地に麦や芋が植えられ人口が増えた。
ヨーロッパのみならずキリスト教を奉ずる白人は15世紀頃から世界を制覇して
各地の大自然の森林は徹底的に伐採された。南北アメリカ大陸、アフリカ大陸、
オーストラリア、ニュージーランド等々、伐採のみならず原住民のホロコースト
生息する動植物までが生態系を失っていった。つまりキリスト教文明の一般的な
西欧人の考えは自然がそのままでは悪であってキリスト教の手によって征服され
初めて神に祝福されて善きものになる。それは営々と築いてきた地球の大自然
神という名の下で破壊したのは一神教信者であり現代に至るCO2排出や原子力
ルーツを辿ればそれらに繋がってくる。絶対的な力を持つ創造者ただ一人を信じ、
それを信じない者は徹底した弾圧も辞さない厳しい性格の宗教で元を質せば同じ
神のはずなのに時として激しく対立し戦争まで引き起こし今に至っても絶えない。
そこへくると日本人の持つ宗教観のなんとおおらかなことよ!日本古来の神道では
自然の美しい山や滝、何千年の命の巨木、強い再生力の動物、立派な人を神と崇め
神社には必ず森があり、森に神聖な御霊があると信じられた。6世紀頃に到来した
仏教も生活に日本人の考えを反映させて木も草も人もあるがままに成仏するとした。
あらゆる生命は互いに関連しあって循環しあっている。それが信仰心の基本と思う。
キリスト教の今は大自然に寛容だが史実の一つとして覚えておかなければならない。
宗教は神さまの創造でなく人間の創造であることを彼岸の行事に思う。