隠居の独り言(1095)

暑さ寒さも彼岸までの言葉どおりに大陸から乾いた秋風がやってきた。それにしても
今年の残暑は厳しかった。盛夏の暑さより残暑がボディーブローのように身に堪えた。
それでも季節は正直でスーパーの陳列棚はキノコ、梨、栗、サツマ芋など秋野菜が
並べられ秋の味覚の代表サンマが本格的に出始まった。最初は品薄で高価だったが
今は庶民が気軽に買える値段になっているのはサンマ好きの自分にはとても嬉しい。
毎年の恒例の目黒のさんま祭りに今年は行けなかったが「目黒のさんま」の語源は
落語を聞いたことがない人でもハナシはご存じだろう。落語にも色々諸説があるが
最もポピュラーなのは松江18万石、松平出羽守が目黒不動尊に参拝に出かけ帰り道、
おなかが空いたので家来に命じたら近所の農家から焼きたてのサンマを持ってきた。
焼きたてのサンマに大根おろしと醤油の味は、あまりの美味しさに殿様は感動した。
殿様の食事は家来が調理し誰か毒味役もいて時間が経った料理は冷めたものばかり、
とにかく出羽守はこんな美味しいものを食べたことがなく感動した。そして誰かに
自慢をしたくてしようがない。天下泰平の殿中では殿様たちは退屈な話しばかりだ。
出羽守は隣の席の黒田筑前守に貴殿はサンマというのをご存じかな?あれは美味い!
筑前守は知らないからくやしくてしかたない。早速家来に「サンマを買ってまいれ」
料理人は殿様の食事だからサンマの脂っけを落して差し上げたら全然美味しくない。
翌日殿中で筑前は出羽に貴殿はサンマが美味しいというが嘘を言ってはいけない、と
文句をつけた。出羽も負けちゃいない。貴殿はサンマをどこで買い求められたのか?
え?なに?房州から?そりゃだめだ!サンマは目黒にかぎる!というのが落ちだが、
そこは落語家の腕のみせどころで、昨年亡くなった五代目圓楽の舞台は忘れられない。
落語に限らず秋はまた、芸術の秋、スポーツの秋、読書の秋、旅行の秋、豊年満作の秋、
爽やかな秋晴れは少し先になりそうだが来週はもう10月、今年も四分の三が過ぎた。
外交,政界は「天気晴朗なれども波高し」だがこれは時の経過が解決してくれるだろう。
年月を早いと思うのは歳のせいか?若い頃は21世紀は遠い先と思っていた。秋だなぁ