隠居の独り言(1100)

10月も半ばを過ぎ今年のプロ野球も終わって心は冬のストーブシーズンに入った。
クライマックスがあっても日本シリーズがあっても阪神ファンに今年の野球は無い。
意識の冬眠状態は来春の啓蟄の頃まで待つしかないが今年の阪神もふがいなかった。
それでも最後の試合で今年引退する金本知憲が花場を見せてくれたのは流石だった。
懸命に打って走って本塁で刺されたのが絵になったのも金本の人気を物語っていた。
野球の神さまからのプレゼントだろうか?9回2死、最後のDeNAの打者の飛球が
レフト金本のグラブに納まったが映画のラストシーンのような劇的な瞬間だったし
「ホームランを打ちたかった」野球少年のような金本の顔に阪神ファンは癒された。
来年の阪神は金本はじめ城島健司藤川球児などの看板スターの引退やFA宣言で
お先真っ暗の状態だ。これで来年もBクラス以下に決定したようでファンは悲しい。
振り返れば27年前1985年10月、猛虎軍団が優勝し吉田監督は胴上げで宙に舞い
選手を始め多くの阪神ファン歓喜の興奮で絶唱や感涙ありで感動のルツボだった。
ダイナマイト打線は、真弓、弘田、バース、掛布、岡田、佐野、平田、木戸、等々・・
歌い慣れた歌詞のようにすらすら名前が出るのも未だに優勝が忘れられないからだ。
全国各地で「六甲おろし」が熱唱され阪神景気に沸き日本が輝いた高度成長期だった。
敗戦で打ちひしがれた国民を野球というスポーツが人々の心を慰め日本再興の士気を
鼓舞したか計り知れない。当時のプロ野球は大相撲に次いで第二の国技と言われたが
特に伝統ある阪神と巨人の果たした役割は戦後史の大きな柱となったのは間違いない。
思えば阪神の寅吉は因業なもので惚れたが如き恋人に思いが通じたのはあの年だけで
それに飽きたらず一途に恋い焦がれる。この純真さは常勝巨人ファンには分かるまい。
あれから27年、阪神の没落に合わせるように日本が衰退しはじめて今日までに至る。
たかが野球の阪神というなかれ。阪神が強い年は景気がいいというジンクスがある。