隠居の独り言(1110)

最近はストーカーという言葉が報道を賑わせているが、このほど神奈川県逗子市で男が
以前交際していた女性を殺害し自殺した事件は、男の独占欲と嫉妬心からの犯行だが
あの世で恋が成就すると勝手に思いこんでの犯罪行為なら被害者は到底浮かばれない。
まして警察が犯人を規制法で逮捕しながら逮捕状を読み上げる際彼女の新しい苗字と
住所を教えたというから怒りを超えてくる。どんなに彼女が悔しかったか測り知れない。
訴えてきた被害者に対して警察官の杓子定規の対応は、あまりにも人間味が無さすぎる。
ストーカーの被害は年々増え続けているという。要因は様々だろう。IT時代の発展は
便利を追求する反面に言葉、距離、節度、労力、そして人間対人間の触れる実感さえも
失くしたのが大きな原因と思う。本来なら「恋」は簡単に手に入るものではないはずで
昔から思いを遂げるために恋文の文章の苦労を重ねたし、恋の歌も美しくて華やかに
作られて相手に捧げた。今のPCや携帯の知性のない隠語や省略語に情緒が感じない。
犯人は何千通のメールを送ったというがメールの数より一通の手書きの手紙のほうが
気持ちの疎通と情愛が伝わる。現代のストーカーたちは言葉の文化を知らない愚者だ。
しかしストーカーの心理は分らなくもない。惚れた女性に自分の気持ちが通じなければ
ヤケ酒の一杯も飲みたいだろう。すぐにも会いたい心情は誰にも経験ある青春の苦さだ。
昔も今も男と女の関係は変わらない。ストーカーの言葉が無かった時代から逃げる女を
ひたすら追いかける困った男どもは世間にはびこっていた。大正時代に活躍した作家・
近松秋江も惚れた芸妓を捕まえてその模様を「黒髪」[狂乱]の小説を書き有名になった。
横恋慕の姦通事件で投獄された北原白秋、多くの愛人を持って自殺した芥川龍之介
妻を佐藤春夫に譲った谷崎潤一郎、姪を妊娠させた島崎藤村、人妻と心中した有島武朗、
二度も姦通事件を起した志賀直哉夏目漱石の不義密通、竹久夢二の女性遍歴、等々
錚々たる日本文壇の巨匠達に横恋慕やストーカー歴があるのは、どんな立派な文人でも
理性を失った痴愚は誰もが持つ人間の性なのか?男女の大元は生物の雄と雌であって
45億年前の地球誕生後に何らかの偶然で生物が誕生してからの二つの極は暮らし方の
あらゆる側面で互いを求め合い生きてきた。当然に優秀な異性と結合して良き遺伝子を
次世代に残す本能を持ち合わせ闘争はここから生まれた。俗な言葉で男はヨカオナゴを
求め、女はイケメンを求めるのは本能であり人類発展の源であり子孫繁栄の基本なのは
いうまでもない。男と女なの大きな違いの一つに男は物を蒐集するが女にはそれがない。
昆虫や切手の標本を集める女は殆ど見かけないし骨董品屋にたむろするのは男に限る。
つまりマニアックな性格は男の特性で女に惚れれば偏狭な独占欲と執着心が強くなる。
されど去る者は追わず。振られた男の気持ちは分るが女は星の数ほどいる!