隠居の独り言(1145)

日米首脳会談でTPP交渉に大きく踏み出したというのに案の定、農業団体の親分が
反対意見を述べて政府に圧力を掛けている。食料自給率とか食の安全といった課題は
聞こえはいいが、これまで莫大な税金の上で成り立っている日本の農業の実体をここで
見直す良い機会で、これまで日本の米、麦などの農産物は政府が販売価格を決め税金を
使って農協が買い入れ、そのうえ生産性が上がって休耕田ができると補償金まで払い
所得補償制度を導入するとは過保護もいいところだ。元を辿ると戦後の食糧不足の時は
農業振興が欠かせない政策だった。消費者に対しは米や麦の配給制度が実施されたが
とても足りる状態でなく都市に住む庶民はヤミのルートを頼って買い出しに出かけた。
あのころ自分も大人に同行して買い出しに行ったが農家の人間は米を買いに来た人に
値段を吹っかけ私利私欲に走っていた態度は今も許せない。餓えた人の前で握り飯を
食べながら偉そうな顔をしていた農家のオヤジが憎かった。同じ日本人として戦後の
食糧不足の苦労は同じはずなのに都市の人と農家の人の食べるものの差は歴然として
この歳になっても農家を好きになれない気持ちが残る。しかも戦後の農地改革により
自作農が増え都市近郊の小作農家がタダ同然の土地で億万長者になり今もその土地で
幅を利かせているさまは農業以外の産業に携わった者としてその不公平感は拭えない。
僻みではないが車で田舎を走れば農家の豪奢な家が多いのには腹立たしくさえ感じる。
でも現に農業に従事する人の平均年齢は65歳を過ぎ放置すれば日本の農業は滅亡する。
TPP交渉のこの機会にむしろ思い切った農業保護策を関税以外の手段で講じるべきで
旧態然とした農業のあり方を見直す良いチャンスではないか。農協のTPP交渉反対は
農民より農協が甘い保護政策が打ち切られる心配と国会議員の票の圧力に他ならない。
日本が貿易で成り立つ以上はTPPに参加しなければ日本抜きで貿易ルールが作られる。
それは日本の輸出品だけが関税を課せられるし、日本の投資も日本が持つ知的財産権
弱い立場に置かれてしまう。しかもTPPの先にはアジア太平洋自由貿易圏FTAAPが
構想され日本が加盟することは既に宣言されている。アジアの一員として、技術立国と
して、避けて通れない今回のTPP交渉は安倍晋三が目指す「強い日本」の一歩だろう。
マスコミの悪い癖はTPPのもたらすデメリットばかりを報道し利益についての議論が
少ないことだ。政府もTPP交渉参加の意義をきちんと分かり易く説明するべきだ。