隠居の独り言(1196)

むかしむかし西洋にレオナルド・ダ・ビンチという飛びぬけた頭脳明晰な方がおられた。
誰でも知っている有名人。モナリザを描いた画家であるのは超有名だが様々な機械の
設計・発明もなさったし人体の構造・生理についても考察なさった。それも全て超一流。
昔の日本にもそういう人は沢山いた。円山応挙杉田玄白、平賀源内、南方熊楠、等、
彼らの考えたこと、実証したこと、卓越した博識と芸術は、何世紀を経ても輝いている。
これら超人の共通点は誰に教わることなく自らの独創で成しえたことが凡人との違いだ。
「二足のワラジ」という言葉があるが彼らのワラジは数えきれないほど持っていただろう。
独学の独創性といえば自分が所属している「カルテット花火」のリーダー、マヌエルは
ギターを始めとする各種弦楽器の超技巧テクニック手法は自らが編み出したもので
オタマジャクシの楽譜にも縁がない。それでいて、どんな曲でも即座に美しい音で弾く。
絶対音感を持ちチューナーも必要としないのも生れ持った天性が備わっているのだろう。
マヌエルの作曲した歌は数々あるがどの曲もメロディーが美しく哀愁をこめた作品は
彼の素朴な気性と若き日の苦労や希望に満ちた人生を物語っているようで感動する。
かつてマヌエルはペルーを中心に活躍した有名音楽家だが現在は縁あってバンドの
仲間として付きあっていただいている。技量の違いすぎる自分に勿体ないと常々思う。
独学の素晴らしさは基礎から進歩の過程まで全てが自分の記憶の引き出しに入って
だから抜け落ちた部分がまるでない。メンバーのひとりVagabundoも独学でギターと
スペイン語をマスターした。独学で鍛えたギターでマヌエルとアドリブを楽しんでいる。
羨ましい限りだがどの曲を問わず即興的に合奏できる技量は生半可なものではない。
バンドの中心的役割をしているMaestra,Keikoも南米で20年近く暮らし歌もギターも
殆ど独学で数百曲のレパートリーを有している。スペイン語歌詞を完璧にマスターし
ギターのコード進行とリズムを正確に演奏できるミュージシャンはそんな多くはいない。
自分を振り返れば何人の師匠に仕えたことだろう。独学の根性なく先生に習うことで
上手くなると思った勘違いは師匠から教えられたものしか出来ない自分が情けない。
師匠について学ぶのも決して間違ってはいないが固執しすぎると独創性を失うという
デメリットのあるのを最近知った。一人で努力してこそ初めて自分の世界が開ける。