隠居の独り言(1198)

20年夏季五輪東京招致の最終プレゼンテーションで安部総理はじめ演説した人達の
スピーチの素晴らしさよ、ときに大きな身ぶり手ぶりも交えながらIOC委員に訴えた。
中でも印象に残ったのはパラリンピックに3大会連続出場した義足の走り幅跳び選手、
佐藤真海さんが登壇し東日本大震災気仙沼の実家が津波で被災した体験を交え
障害者として被災地出身者としてスポーツの力を世界に訴えた。ついでキャスターの
滝川クリステルさんは得意のフランス語で日本人の昔からの伝統的な「おもてなし」の
精神を強調した。スピーチをした全員がストレートに自分を見せ話すトーンも落ち着き
相手を説得する姿勢が素敵でどの場面を見ても実に爽やかで委員の心情を捉えた。
それら何気なく話すスピーチにも素晴らしい構想、猛練習の成果にも想像に難くない。
招致努力の結集がプレゼンテーションでありIOC委員達の心情を東京に向かわせた。
演説の感動はさておき、先日某ギター教室発表会の見学をした。上手な方も多いが
生徒のなかには譜面台を置いて楽譜に目を落としながら自信なさそうに弾き終わると、
そっと消えるように舞台を去っていく生徒もいる。日々の練習の成果を発表する機会
なのだから、もっと自信をつけたい。といってかつて自分を見るようで懐かしさが蘇る。
自分も最初は自信の無さで舞台の上でアガッた。その次は自意識があまり強すぎて
普段の練習の半分も発揮できず恥辱で終わった。それは誰もが体験する階段だろう。
振り返れば自信は経験を積み重ねることに尽きる。途中で間違えたり音を外した時に
首をかしげる人もいるが知らぬ半衛門でいい。演奏の楽しみは技巧のウマヘタでない。
生徒は演奏を間違えないようそればかりに集中し肝心の音楽の本質を忘れている。
音を間違えたっていいじゃないか。テクニックより舞台の上から楽器で客と対話しよう。
話を最初に戻せばスピーチも発表会も聴く人の気持ちを惹くことの本質は変わらない。
発表会は自らのプレゼンテーションであり舞台に立てば、丁寧な態度、清潔な服装、
美しい動作、そして姿恰好も意識しよう。自らの美学を持つことが自信につながる。
お客さまに演奏を聴いていただくために、まず譜面台を取り払おう。完全に暗譜して
自信と余裕を持つことが大切だ。「自信」の素晴らしさを、この齢にしてやっと気付いた。