隠居の独り言(1210)

先週の体育の日の新聞、TVの特集で健康な高齢者達の活躍ぶりが報道されていた。
誰も長寿でピンピンコロリを願うが日本人の100歳以上の高齢者は54000人以上で
もちろん世界一。しかも人口10万あたり34人は欧米の20人より優れ近隣アジアの
約8人から比べても飛びぬけて多いのが分かる。日本人として実に誇らしく目出度い。
100歳まで生きるためのカギは、禁煙、節酒、適度な運動、そしてバランスよい食事を
腹八分目に取るとある。そして性格的にも共通点があり「好奇心旺盛で新し物好き」
「社交的、開放的」「意志強く誠実」といったタイプが多い。そしてなにごとも楽観的で
人生を肯定的に捉え将来に対しあまり不安を感じない人が特徴という。100歳以上の
高齢者をセンテナリアンというがセンテナリアンにも達すると活力、体力、気力などの
エネルギーも徐々に薄れ世の中の執着や死への不安、恐怖もなく体が自然に枯れて
眠るように永遠の別れをつけられる確率が高くなる。でもそれは誰もが知っていても
「言うは易し行うは難し」で、普段は夕飯に晩酌を嗜み、運動も億劫で、食べるものも
美味しいものは別腹だ。自分もけっして非俗、知的、高邁でなく優等生的でないので
100歳は無理だろう。人命は受精卵から細胞分裂が続いているからで分裂が止まり、
新細胞が供給されなくなるまでだが分裂には限界があり人は50回でピリオドという。
ちなみにネズミは10回、象は100回といわれている。100歳以上の長寿者は細胞の
限界まで使い切ったということだろう。しかし長寿が目出度いといっても生き方の質で
人の価値が定まる。そして健康あっての長寿でないと人生を充分満喫したといえない。
長寿は誰もが望むところだが一般的な生活で仕事、病気、人間関係などのストレスで
その人のエネルギーが枯渇するまで待ってくれない。平安期に書かれた伊勢物語
「ついに行く道とはかねて聞きしかど、きのう今日とは思わざりしを」作者不詳、がある。
ついに行く道とは終着の道のことで来るとは分かっていたがこんな早くやってくるとは
思わなかったと驚いている。いずれにしても老いも死も向こうからやってくるものでなく
その人自身に用意されているもので意外と早くやってくるかも知れない。ある程度の
年齢に達したなら死の覚悟も常に持っていなくてはならない。秋の夜更けに一人思う。