隠居の独り言(1213)

NHK大河ドラマ「八重の桜」は、国内での最後の内戦というべき西南戦争が終わって
ようやく明治初期の文明開化の時代が訪れるが、生活文化の変遷に庶民にとっても
長らく続いた江戸時代からの習慣から抜けきれず何かにつけて戸惑ったに違いない。
先週のドラマで、襄(オダギリジョー)と八重(綾瀬はるか)は新婚のみね(三根梓)と伊勢
(黄川田将也)を連れて会津に里帰りをしたが東北の人達には彼らの洋服の姿格好に
おそらく初めて見て驚いただろうし食べるものでも襄は牛乳を飲んだり卵焼きを作って
洋風の食べ物を紹介していた。ついでながら明治政府は明治5年に1200年続いた
肉食禁止令を解いて牛肉を食べる習慣が文明開化とともに始まった。ついで続きに
親子丼は言わずと知れた鶏肉を卵でとじ、ご飯にかけた丼だが豚でとじると他人丼で
牛肉でとじると開化丼という。文明開化を丼名に付けるとは丼屋の名称作りも面白い。
でも政府が禁止令を解いたからといっても仏教の影響もあり肉は汚れものの意識が
根強く相当に時間が掛かったらしい。パン屋も次々と出現したが最初は殆ど売れずに
長年馴染んだご飯の口に合わなかったからだろう。でも改良好きのパン屋の発明は
饅頭とパンをミックスしたアンパンの出現で、おおいに売れたという。日本人の生活を
根底から変えた文明開化は衣食住から習慣、モノの考え方まで新旧の転換があった。
自由、平等の精神は身分制度を廃止して誰もが立身平等の夢が与えられた反面に
納税や兵役の義務も課せられた。それは自分が子供の頃に体験した軍国主義から
民主主義への転換に似て何もかもが変わっていった戦後の混乱期は明治の初期の
背景がタイムスリップしたようでドラマの時代考証が違っても戦後の懐かしさを覚える。
今回のテーマは「鹿鳴館の華」で鹿鳴館は外国からの賓客や外交官を接待するため
政府によって建てられた社交場で当時の極端に走った欧化政策を象徴の場であった。
ドラマで襄は八重と共に同志社大学の設立を陳情するために東京の勝海舟を訪ねる。
2人はその帰りに山川家に立ち寄るが丁度、山川家に旧薩摩藩の陸軍中将・大山巌
(反町隆史)が長期留学から帰国したばかりの山川家の末娘・捨松(水原希子)を嫁に
欲しいと来ていた。旧薩摩藩士との結婚に怒りを抑えきれない長兄の浩(玉山鉄二)と、
迷いを捨てきれない妹の捨松であったが、その様子を見かねた八重は一計を案じて、
かつての会津の恨みを大山巌に腕相撲で挑戦する。もう薩摩や会津の時代ではない。