隠居の独り言(1230)

一年に一度は健康診断を受けることにしている。といって大まかな半日検査だけだが
血圧測定、胸部レントゲン、尿、血液検査、眼底、心電図、そして医師の診察を受ける。
毎年12月辺りにしている理由は、今年の身体の具合の総決算であり、来年にかけて
健康診断は欠かせない。一週間後、検査報告書の数値と所見は、血糖値、中性脂肪
コレストロール、尿酸、血液、血圧、その他昨年と同様の正常値なのでホッとしている。
といって完全な健康体でない。時々起きる不整脈、腰痛、顔面痙攣などを抱えている。
人生は「欠け茶碗」のようで、健康、才能、環境、性格など問題のない人は誰もいない。
歳を重ねる毎に健康は何に替えられない宝のように思えるのは人生が有限だからだ。
どんな資産家でも、どんな偉い人でも、どんな芸術家でも、どんな美男でも、美女でも、
健康あっての幸せだ。「健全なる精神は健全なる身体に宿る」健康であれば気持ちに
余裕が生まれ生きる希望と喜びに直結する。しかし人の意思は弱いもので三原則の
食事、運動、睡眠と分かっていても、美味しいものは腹一杯食べて、面倒なことには
体を動かすのは億劫で、好きなことには夜更かしをする。健康は遺伝10%、運20%、
心がけ70%とある。遺伝と運は仕方ないが心がけとして日々の生活習慣を守りたい。
「美しく死ぬのはさほど難しいことではない。だが美しく歳をとることは至難の業だ」と
フランスの作家アンドレ・ジイドは言ったが死ぬときは誰かが手助けをして容易いが、
美しく老いるにはそれ相応の努力が必要となろう。何もしないで、漠然と生きていれば
老醜が漂うだけで、充実をモットーに努力する人だけにしか美しい老人像は築けない。
日本は先進国の中で最も「寝たきり老人」の多い国と聞く。日本人の特有の老人への
優しさが却って健康に悪い場合あるのも一因だ。いま駅の階段にはエスカレーターや
エレベーターがつき中には「動く歩道」というのもあって駅の親切は至れり尽くせりだ。
バリアフリーの段差のない作りの家やマンションも増えている。歩幅の少ない老人に
有難いが家族も優しく「外に出て怪我したら大変」と気遣う。年寄りのためにしたことが、
逆に寝たきり老人を増やす結果になっている。老人といえ身体は使ってこそ維持され
使わなくては萎えてしまう。それは年齢には関係なく自分の身体は自分だけのもので
誰も身代わりになってくれない。人生の終りは寝る定めだが、最後の最後まで自分の
足で歩くことを心がけなければ、三途の川は渡れない。