隠居の独り言(1242)

今年のNHK大河ドラマの「軍師官兵衛」は視聴者の周知の通り戦国時代に活躍した
黒田官兵衛岡田准一)の出世物語で生まれも育ちも兵庫県姫路市の出身とあれば
自分の故郷でもあるので数ある大河ドラマの中で最も興味もあり親近感も湧いてくる。
同じ姫路生まれ作家・司馬遼太郎黒田官兵衛を書いた長編小説「播磨灘物語」の
「あとがき」に「街角で別れたあとも余韻ののこる存在である。友人に持つなら
こんな男を持ちたい」とある。司馬さんは官兵衛がよほどの魅力ある人物と映ったのだろう。
軍師官兵衛」を今まで3回を見たが劇中に出てくる御着、龍野、室津、英賀などの
地名を聞けば姫路で過ごした少年時代が懐かしい。司馬さんは「友人に、したい」と
彼を表現したが主君・秀吉(竹中直人)は官兵衛が大きな軍功を上げてもそのわりに
優遇しなかった。付け加えれば秀吉が天下人になって側近を集めた夜話に「自分の
死後に天下人になるのは徳川家康でも前田利家でもなく官兵衛だ」といった。側近は
僅か12万石の彼に何ができるでしょうか?という言に「あの者の凄みをお前たちは
知らない。俺はむかし彼と山野で起き伏した。俺だけが知っている」と、官兵衛を
知る秀吉はなかば恐れなかば嫉妬したという。秀吉が信長(江口洋介)に仕えていた頃、
鳥取城の包囲戦、高松城の水攻めなどの軍略を提案し、そして本能寺の変のときに
際しては「今こそ天下取りの好機」と秀吉を激励したとされ、いわゆる「中国大返し」の
実現のサポートした功労者は土地勘のあった官兵衛以外なかった。そんなに秀吉に尽く
官兵衛なくしては天下人もあり得なかったのに官兵衛を秀吉が冷たく遇したのは
官兵衛があまりにも優れた智謀人の資質を秀吉は身をもって知って恐れたのだろう。
しかし秀吉の予言したとおり、関ヶ原合戦のとき九州で最後のバクチを打って家康を
不気味がらせたことも事実だったろう。でも歴史小説の大部分は作家の創作であり、
大筋は曲げられないが人物像をいかに表現するのかは脚本家の腕の見せどころだ。
姫路で生まれた黒田官兵衛の生涯を物語る今年の大河はとても楽しみにしている。
主役の岡田准一という俳優は今まで知らなかったが官兵衛をどのように演じるのか、
自分の描いていた官兵衛イメージと合えば今年の大河は宝になる。戦国期において
特異な存在だった黒田官兵衛像をどのように描いていくのか、とても期待が大きいが、
ときどき播磨屋のブログに書きたいと思う。