隠居の独り言(1280)

先日のNHKテレビ「認知症特集」で放映された一人の女性患者を見ていた視聴者が
家族ではないかと届けて発見された報道には身につまされる。7年前に群馬県内で
保護されたものの認知症のため身元が分からず、施設で暮らし続けた女性が東京の
67歳の女性と確認された問題で女性を保護した警察署では身元の判明につながる
名前を把握したにも拘らず警察は異なる名前で把握してしまったのが発見を遅らせた。
この女性は東京浅草に住み素敵な美人で教養があり性格も明るく元アナウンサーの
履歴を持つ頭脳明晰な才女がどうして認知症発症の人生を辿るのか誰にも分らない。
警察の対応のまずさはさておき認知症やその疑いがあり徘徊などで行方不明になり
警察に届けられた人は1年間に全国約1万人とか・・内350人が亡くなっていたという。
他人事でない。自分も最近は物忘れがひどく人や物の名が咄嗟に出ないのは年中で
朝の出勤の時など家の鍵やハンカチなど小物から携帯や財布が時々ポケットに無い。
先日はメガネをかけず会社に着いてから気がついた。笑って済ませるうちはまだいい。
認知症の初期症状とは、物忘れがひどくなる。同じことを何度も話す。怒りっぽくなる。
失敗が多くなり人のせいにする。日付や曜日が分らない。疑いが深く被害妄想になる。
身だしなみが構わなくなる。趣味に興味が沸かなくなる。ぼんやりすることが多くなる。
勘違いや誤解が多くなって話が噛み合わなくなる等々・歳をとれば何かにひっかかる。
けれど普通は体験の一部を忘れても全て忘却することはない。しかし認知症に罹ると
新しい体験は丸ごと忘れてしまう。だから古い昔の体験ばかりを覚えて話を繰り返す。
いまは老妻と二人暮らしだがどちらが認知症になっても現ライフスタイルは守れない。
年寄りの三大死因はガン、心筋梗塞脳卒中だが痴呆症は死に至ることはないので
ケアの費用、家族介護は想像以上のものがある。医療進歩の度合いは日進月歩で
三大死因も近未来に克服できるが、痴呆症療法は未だ深刻で遅々としているという。
病気の克服によって近く寿命百年の時代が来るだろう。しかしそれは痴呆症患者が
それだけ多くなるということで素直に喜べない。長寿とは、ただ生きているだけでなく
健康で長く暮らすのが目標であり個人の生き方を実りあるものにしたいと切実に願う。