隠居の独り言(1353)

今年のNHK大河ドラマ「軍師・官兵衛」は自分の好みで近年になく良かったと思う。
主人公・黒田官兵衛が自分の故郷の姫路の出身であるという親近感もさることながら、
以前に司馬遼太郎の作品の官兵衛を描いた名作「播磨灘物語」を読んでいたので、
とても興味が湧いて毎週の放送日が楽しみだった。最終回は衆院選の関係で一週間
延びたが、一拍置いたのも大詰めの期待感を濃くした。官兵衛を演じた岡田准一は、
実に適役で官兵衛の歴史的役目のイメージを良くした。大河ドラマのクライマックスは
やはり最後の3話で、「天下人」という官兵衛の大夢を叶えるため、岡田は彼なりに
暴れん坊をやって満足の役柄だったろう。最後の3話では秀吉(竹中直人)の死後、
関ヶ原の合戦に至る過程、そして九州での官兵衛の活躍ぶりだが、どちらのドラマも
面白く描けていた。そして官兵衛に関して最も印象的なセリフは二つ。一番のセリフは
本能寺の変を受け秀吉に囁いた「殿のご運が開けたのですぞ」と天下を変えたセリフ。
信長(江口洋介)が本能寺で憤死し、途方に暮れていた秀吉を励ました有名なセリフだ。
明智光秀と天下分け目の山崎の合戦に向け中国大返しを企画したのも官兵衛だった。
この頃の官兵衛の軍師としての権謀術数は先々見抜いた本領発揮され、この辺りの
若き日の官兵衛が素晴らしい。それから暫く時が過ぎて、二番目は関ヶ原の戦い
後に息子の長政(松坂桃李)が徳川家康に握手されたとき「そのとき、お前の左手は
何をしていたのだ」官兵衛には天下の目論見が外れた悔しさに、長政に家康を殺す
絶好のチャンスであったのに、フィクションにしても官兵衛の長政への言葉は語り草で
今も後世に伝えられている。今年のドラマは戦国時代の美味いところを選りすぐった
企画構成がとても良かった。官兵衛の天才的な智謀の資質は優れたものだったが、
甘く見るお人好しの点もあり、だから荒木村重田中哲司)に幽閉される悲劇に遭う。
中年の頃は秀吉の軍師として大活躍した時期、そして晩年期は関ヶ原の時に九州を
震撼させ天下を狙った官兵衛。その三つの時期の官兵衛を見事に演じた岡田准一
拍手を贈りたい。ご苦労様でした。キャスティングで良かったのは石田三成田中圭
織田信長江口洋介母里太兵衛速水もこみち黒田長政の妻「糸」の高畑充希
荒木村重の妻「だし」の桐谷美玲小寺政職片岡鶴太郎。等々、自分の偏見だが・
大河ドラマという一年を通じて見る番組は当ると当たらないではその年の明暗となる。
作家司馬遼太郎黒田官兵衛をお気に入りだったようで「播磨灘物語」のあとがきで
「街角で別れたあとも余韻の残る感じの存在である。こういう男を友人に持ちたい」と
結んでいる。官兵衛は、たしかに軍略に優れ人情を知り知力溢れる人物だったようだ。
自分もこのような人と親交を持ちたいものだ。繰り返すが、今年の大河は良かった。