隠居の独り言(1370)

不敬を承知で天皇陛下が羨ましい。陛下は自分と同年だが、何が羨ましいかというと
御髪が房々とおありにあるので何とも羨ましい。自分は60代ごろから年毎に頭髪が
薄くなって毛生え薬の広告見れば買ってきて試し、医者にも聞いてみたが正直言って
何の効果もなかった。亡くなった親父も70歳前後には、サハラ砂漠状態だったので
遺伝子が為せる業としか言いようがない。やはり無駄な抵抗だと遅まきながら悟った。
病気になって健康の有り難味を知るように頭上が寂しくなって若き日の黒髪が恋しい。
最近亡くなった同い年の筑紫哲也や俳優の高倉健も濃い髪のままで鬼籍に入ったが
同年輩の田原総一朗鳥越俊太郎などは未だに髪房々して羨ましいことこの上ない。
でもこの年になると今更ふさふさ髪で女にモテようとする気持ちも失せ、人生を達観し、
薄い頭を気にすることもなくなった。テレビ等で芸能人や歌手がカツラを被っているが
少しでも若く見せようとするメイクの仮面パーツみたいで却って哀れに感じてしまう。
変に細工しないで歳のままでいいのではないか。そのほうが人生の深みが滲みでて
人間味が感じられる。この手の騙しには愛嬌があっていいが自分の好みから言えば
髪のカツラでなく帽子を被ったほうが薄毛隠しとともに自然体に歳相応に格好がいい。
自分が帽子屋だからって帽子宣伝でない。とくに役者や歌手は人前に出るのだから、
そのあたりの心配りを充分注いで欲しい。ご婦人も加齢とともに薄毛になる方が多い。
言うまでもないが、帽子は冬には寒さ避けにもなるし、夏には暑い紫外線予防にいい。
外出や通勤には帽子は欠かせない。帽子は衣服の一部で気温の変化、怪我予防に
とても役立ち、何より帽子を被ると男前を一枚上げるし、女性は優雅な姿に変身する。
実際、頭が薄いのは貧相に見える。お金が有っても無くても、姿格好は豊かにしたい。
男性の被り慣れない人へ、最初にハンチングを被ってみよう。洒落て少し深めに被る。
カジュアルは言うまでもないが、フォーマルな場合も悪くない。多少の自信が付いたら
お出かけにはソフト帽がお薦めだ。帽子というのは似合う、似合わないでなくまず被る。
被ることに自信を持つ、その自信が帽子と自分を一体感にさせてくれる。帽子を被る
お洒落は言葉に尽くせない優雅な気持ちにしてくれる。以前に所属していたギターの
アンサンブルが揃いの帽子で演奏したが評判が良かった。今も近所の老人ホームで
ギター弾き語り慰問をする時があるがそんなとき帽子を被ると雰囲気を纏めてくれる。
帽子は小物のお洒落だが、効果はとても大きくその人となりを数倍も素敵に演出する。
自分にとって帽子は人生そのものだったが帽子屋人生も悪くなかったとしみじみ思う。