隠居の独り言(1387)

今回大河ドラマ「花燃ゆ」の前半クライマックスともいうべき吉田松陰処刑のシーンが
流れたが、松陰の伊勢谷友介の熱演が実に素晴らしく、彼は松陰のはまり役といえる。
歴史的には松陰は純粋にありすぎた。思想家で詩人としての松陰の生涯はあまりに
生真面目すぎて常人の自分には想像を超える心の基準と感じる。安政の大獄という
過酷な運命であったにせよ幕末という変革期にあまりにも大きな人物が消えてしまう。
処刑指示した井伊直弼の歴史家の評価は別れるところだが攘夷・開国の二者選択に
直弼の一本気の実直過ぎた政策は結局、自滅の運命を辿ってしまうのは必至だった。
松陰と直弼の、どちらも譲ることをせず歴史の舞台は大きく傷をつけながら動いていく。
ドラマを見ていて年甲斐もなく涙が出た。歴史を遡って平家滅亡や織田信長横死など
歴史の出来事より松陰刑死のほうが或る意、日本の損失があまりにも大きいのでは・
その今回のドラマ「花燃ゆ」が、あまり評判が良くないという。人気女優・井上真央
主演というキャスティングをもってしても各回の視聴率は12〜15%台を行き来きして
苦戦が続き、歴代大河史上最も低い視聴率でのスタートとなっているらしい。そもそも
今回の主人公が幕末の思想家・吉田松陰の妹・文という歴史的無名の人で放送前から
「地味では?」と不安視する声もあったという。2011年の上野樹理「姫たちの戦国」や、
2013年の放送の綾瀬はるかの「八重の桜」が思い出す。大河という一年間をかけた
歴史ドラマはテーマといいキャスティングといい、よほどの良質でないと長続きしない。
そもそも大河ドラマは一年の期間をかけての大型時代劇であり、日本史上の出来事、
人物や事件のテーマがないと見ていてもつまらない。自分も何十年となく大河を見て
時代背景や人物のイメージがあるから、その辺りから遠のくと興味が薄いものになる。
歴史上の脇役から時代を傍観する手法が最近の大河で、ダイナミックさに欠けている。
NHKは過去の失敗を顧みず、何故地味な女性主人公に拘るのか?多分2008年放送の
宮崎あおいの「篤姫」が大成功だったからで二匹目のドジョウを狙っているからだろう。
今回もなお、若い女性視聴者層の開拓を狙って人気男優の伊勢谷友介大沢たかお
瀬戸康史東出昌大高良健吾などを揃えても視聴率が伸びないのは企画の問題だ。
大河ドラマも曲がり角に来ている。提案だが前にドラマの主題と主役を何件か提案し
視聴者に投票して決める方法もどうか。一応、NHKの公共料金を払っている身として
視聴料金に見合う大河ドラマを見たい気がする。