隠居の独り言(1487)

九州電力川内原発をめぐり周辺住民が運転差し止めを求めた抗告審で福岡高裁
「重大な被害が生じる具体的危機は存在しない」として住民側抗告を棄却し、退けた。
しかし3月の大津地裁福井県の高浜原発3、4号機の運転差し止め仮処分決定を
下したことを受け、関西電力は稼働中の3号機の原子炉を停止した。でも疑問が残る。
裁判官は原子力のことについて、どこまで知って、これからどうするのか、答えがない。
津波で先の福島事故がなかったら日本は以前と同じく原発で電力を賄っていただろう。
それより電気料金は原発事故前に比べて全国平均で25%上昇、東京電力の管内で
34%も上昇したのに庶民が黙っているのは気付いていないか、肉や卵が値上がりは
大騒ぎするが電気料金が上がっても無頓着なのはどうしてだろう。さらに電気料金の
上昇は低所得層ほど大きな負担になっているという。産業用も38%上昇して企業は
投資をためらい産業競争力に大きな影響を及ぼしている。そして火力発電の二酸化
炭素排出量の大幅増加で地球温暖化をどう把握しているか。このために世界各国で
原子力発電の開発計画を大幅に見直そうとの動きがみられる。人類の歴史は失敗を
教訓に発展してきた。化石燃料も一世紀後には尽きる時が確実にやってくる。日本の
失敗を生かしたい。アメリカはスリーマイル島事故で新規建設を中止して技術継承が
断ち切られた結果、日本に依拠している。世界最高の原発技術を誇っていた日本が
辞めては世界中の事故対応にも影響するだろう。国際原子力機関は2030年までの
世界の原子力発電所設備容量は30―100%増加すると予測している。とくに東アジア、
東欧、中東・南アジアで大きな伸びが見込まれるとしている。世界の原発は増加し、
産油国でさえ将来の石油枯渇を見越して原発依存に切り替えている。ここで日本が
原子炉を完全廃止して化石燃料が尽きる将来の設計があるのだろうか。その時には
中国やロシアに頼るのか。リスクが存在するのはなにも原発だけではない。リスクに
言及するなら原発始め、戦争、自然災害、交通事故、殺人事件など含めた総合的な
リスクを、どう比較し、どう捉えたらよいかという観点が必要なのではないか。
かつて日航ジャンボ機墜落事故や、尼崎市JR福知山線脱線事故を挙げるまでもなく、
科学技術の恩恵の便利さの裏側には人が死亡するというリスクが潜んでいる。飛行機や
車が良くて原発はダメという明快な根拠がない。日本も世界の潮流から逃れられない。
むしろ原発リーダーとしての役割が期待されているのではないか。