隠居の独り言(1530)

昔、お金持ちは百万長者と称して尊敬された。それがいつの日か億万長者になった。
インフレのせいもあるけれど、それでも億万長者は庶民にとって羨望の的に違いない。
ところが最近は億万長者が珍しくなくなった。東京都心に聳え立つマンション価格は
億を超えるのは普通だし、なかには売り出し即完売というニュースにも驚かなくなった。
裕福になったのか、それとも金の価値が無くなったのか定かでないが、市井の庶民の
自分も小さな不動産を有しているが、それだけなら億万長者がざらにいることになる。
これでは億万長者も市井の庶民と変わらない。やがてお金持ちは兆万長者と称する。
でも素直に喜んでいられない。今年から遺産相続税率が変更され増税の一環とされた。
昨年までは旦那が死ぬと奥方、子供2人の場合、控除額が7000万で普通の家なら
課税の対象じゃなかった。ところが今年から控除額が7000万から4200万に下がって
不動産+預金その他を足すと、ある程度の大都市に住むサラリーマンなら数千万の
資産のストックがあるはずだから旦那が亡くなれば悲しみに追い打ちをかけるように
非情に税金の請求書が送られてくる。国債返済のためだから増税はやむをえないが
消費税先延ばしの裏に相続税増税とは政府も狡い。「子孫のため美田残さず」と
の格言があるが、一般的に相続できる老人は子供から大切にされる傾向があるらしい。
親子といえお金に関しては現実的で、もし「俺が生きているうちに全部使ってしまう」と
言ったなら「じゃ勝手にしたら」と子供は離れていくだろう。逆説にいえば今の老人が
お金にケチなのは家族に大事にされたいからだと思ってしまう。国の外交交渉だって
個人のお付き合いだって或る程度、余裕がなければ世間が狭くなる。デパートなどの
売り場も然り、本来なら最もお金を持っている老人向け商品を棚に並べばいいのだが
若向けの商品ばかり、一見矛盾そうでそれが正解なのかもしれない。相続税対策は
大黒柱が亡くなる前に、子供や孫にうまく生前贈与するに限る。誰もが齢を重ねると
勉強しなくなるものだが、ここはいい勉強の機会と思う。脳の活性化には尚更だろう。
折角、長い年月と苦労かけて貯めた資産だから、子や孫に残すことにしたい。