隠居の独り言 86

今回も安倍首相とプーチン大統領がロシアのウラジオストクで通算22回の会談を行ったが北方領土は何の進展も無かった。そのうえ12日にプーチン大統領は日露平和条約を前提条件無しで締結しようと提案したという。随分と日本は舐められたものだ。両首脳の在任中にお互いに納得できる解決を決めていたのにロシア側の思惑は経済ばかりで肝心の島を返す気がなければ時間の無駄であり安倍首相も席蹴る覚悟がなければならない。ここで今までの日露関係をオサライしたい。北方領土に関して、戦後ずっと何回となく騙され、その都度北方四島の人道援助・シベリアの開発など何かと資金や技術を巻き上げられてきた。ロシアは戦争末期の、どさくさまぎれに獲得した戦利品である日本の固有領土の島を返還する気持ちは到底考えられない。戦争で取ったものは戦争で取り返すのが国際政治の厳然の法則だが、戦勝国の片方のアメリカは紳士的で沖縄、奄美、小笠原、硫黄島などを日本に返還してその後の日米関係の絆をゆるぎないものにしたが、大いに成功した一例だろう。一昨年に、江戸東京資料館でエルミタージュ美術館の展覧会で荘厳なロマノフ王朝の隆盛を見た思いがしたが1875年、当時の首都サンクトペテルブルグで両国が「千島樺太交換条約」を結び、千島列島をロシアから譲り受ける替わりに、樺太全島での日本の権利を放棄した。その条約の中身の千島は北のシュムシュ島から南のウルップ島までの18の島々の名が事細かに明記されている。日本が主張しているのは南部の、国後、択捉、色丹、歯舞諸島が、その条文に入らず、日本固有の領土であったことを物語っている。ヤルタ会談でも戦勝国の領土不拡大を謳っていながらソビエトソ連がロシアに名義変更したけれど、その手法や法の体系は共産国家とさほど変化がない。プーチンの独裁者は変わらず秘密主義も相変わらずで、一般の生活も貧富の差が大きくロシア人の大半はその圧制にあえいでいる。情報も殆ど無く、ロシア人の殆どが「北方領土」がどこにあるかも知らないし、日露が仲良くなるのは、ロシア人に民主主義が根付くのが必須条件は言うまでも無い。「罪九代に及ぶ」中国の諺だが、大陸の人たちは戦争の恨みを子々孫々まで忘れようとしない。13世紀ジンギスハン率いるモンゴル軍に征服されたロシアは20世紀に入って先の大戦でモンゴル人を大量虐殺した事件は700年も前の復讐劇だが、戦争末期の満州の日本人残虐も日露戦争の復讐だろう。日本人の道徳観からは信じられない悪行だが、最近の中韓の嫌味も大陸に住む人の文化思想の変わらない民族の根深いものだから仕方ないかも知れない。といって日本が彼らに合わせることは無い。日本には日本の習慣や国民性やアイデンティティーがあり、民族・道徳も違いそれが国の存在と尊厳そのものだから日本の総理も堂々と靖国戦没者の参拝をして民族の違いをアピールすることが返って世界の日本に対する認識と信用が増すことになるだろう。日露関係そのものも、その辺をきちんと正す事から始めないと領土一つも道は遠い。プーチンと暫く縁を切ってほうがいい。