隠居の独り言 85

ボクはシャンソンが好きで特にシャルルアズナブールに若き青春の日々を重ね合わせる。フランス・パリ出身のシンガーソングライターで彼のシャンソンはその殆どが愛の歌を謳い上げている。イザベル、ボエーム、マンマ、愛のため死す、帰り来ぬ青春・・何度聞いても感動する。アズナブールの歌の特徴はその歌詞が「忍ぶ恋」が多く決して結ばれることのない心底からの恋の燃え方であり、取り返すことができない青春の日が共感するからだろう。アズナブールを歌いたいが、フランス語の発音が難しい。「たまゆら」という言葉があり、「たまゆらの恋」などと使う。毎日会い、手を絡めて歩いたりする熱情の恋の姿でない。それは思いだけが永遠に残って、実現しない恋のことで現代風に言えば片思いだけであって「忍ぶ恋」とも云う。「玉の緒よ絶えな絶えながら忍ぶことのよはりもぞする」新古今集式子内親王の一首で忍ぶ恋は最高とされた。平安の昔ならいざ知らず今の男女の感覚では通じない。アズナブールは多くの忍ぶ恋を「ラ・ボエーム」に託した。♪君は光の中に生き 私は暗い片隅で生きる。なぜなら君は生きることに焦れ 私は恋に焦れているから、私は君の影を愛撫することで満足しよう。もし君がその運命を永遠に私に捧げてくれる気があるのなら・・そのアズナブールが、この9月に御年94歳で日本公演があるというから、彼のバイタリティーには驚きの一言だが、フランスからの長い旅路の疲れもあるだろうに年齢的にも耐えられるだろうか。NHKホールなので放映があるだろう。アズナブールの人生そのものが「たまゆらの恋」であり、忍ぶことによって彼の最も人間らしい純愛が歌わせた。いずれにしても歳を重ねても、いつも恋の心がときめき、ホルモンの分泌も活発になるに違いない。見習いたい!