小僧(27)

先日、親しい友人から現在の額田病院の映像を送っていただいた。
私が退院して半世紀近くが過ぎ、その映像を見て驚き悲しくなった。
昔日の面影は松林の一部と坂道の感じであったが、あの眼下に見た
“広重の絵”のような幕張の浜は国道16号線の車の渋滞と無機質な
ビル群に変貌し自然が破壊された地球の一面が痛々しくさえ思った。
当時の稲毛は、今では考えられないぐらいに自然に恵まれていた。
駅を降りれば一面の畑と雑木林が点在して病院への道を癒してくれた。
高度成長の発展の過程でこのような自然への冒涜が許されていいものか
延々と続く人間の傲慢さを考えてしまう。
先生はもう少し治療を続けたら、の言葉にも耳を傾けずに退院の道を選んだ。
社会から忘れられてしまう、自らも忘れそうな怖さに一途に病院を後にした。