エミール・ガレ展
先日、東京江戸博物館に「ガレ展」を観に行ったが、
展示日の終了前とあって長蛇の列で混みあっていた。
ガレの陶器、ガラス器、家具など展示品の数々は
そのデザインと繊細さまでの美しさに驚嘆した。
このような素晴らしい名作が、我が家に一つでも
あったらどのように輝くことだろう。“美”の
価値を思い知らされた特筆ものの展覧会だ。
ガレはジャポニカの広重や北斎漫画の影響も
受けたらしく私たちに、とても親しみを覚える。
フランスの至宝でありアール・ヌーヴォ期の
先駆者でもあったガレは植物学者であり、詩、
文学、哲学、音楽、鉱物、建築、装飾美術等に
造詣深く、職人であり企業の経営者でもあった
ガレへの尊敬の念は作品を通して胸に迫った。
ともかく感動の一語に尽きる。
小僧一人旅(8)
隣の大家さんの老夫婦は内縁関係だが奇妙な取り合わせでお爺さんが創価学会、
お婆さんが天理教で狭い部屋にそれぞれに教壇が置かれて、決められた礼拝する
時間や日にちが違って時々に用事やお参りなど頼まれ、創価学会の向島のお寺や
天理教の本所の東本へ行き、用事や代参を済ませたが、両方の団体から入会を
執拗に勧誘されても仕事を理由に断った。でも信仰は別にして、そのような世界を
知った事はとてもいい勉強になったし、なかには気の合った人もいて、世界紀行や
動植物の話など聞かせてくれたり、音楽会などあって、楽しいこともままあった。
老夫婦は仲のいい面もあったが喧嘩のときの大声で取っ組み合いの時は中に入って静めた。
なれそめは分からないが、それぞれに子供がいて家庭があるのに、どうしてこのように
暮らせるのか、男と女の葛藤は若い小僧には解るはずなく、これも人生勉強の一つだった
かも知れない。お爺さんには裁断を手伝ってもらい、お婆さんにはお茶をご馳走になった。
独り立ちと偉そうなことを言っても人は一人では生きられない。お世話になったことは
生涯忘れられないこととして、一つ一つの思い出が今になっても走馬灯のように駆け巡る。
年が明けて正月気分が抜けないある早朝のこと、お婆さんがけたたましく小僧の部屋の
ドアを叩いて「大変だぁ、お爺さんが倒れた、すぐに来て」とりもなおさず隣家に入ると
お爺さんは口から泡を出して目がうつろで全身が赤みを帯び、こわばって床に臥していた。