小僧一人旅(20)

当時のTVコマーシャルに「ナンデアル・アイデアル」という植木等の洋傘を差した
画像が大ヒットした。会社は台東区三筋町で、経営者は脱サラして僅か3,4年で
従業員100人を越える成功ぶりで、小僧など商売の神様と思ったぐらいの人でお会い
した事もあったが「商売はアイディアと先見性です」とのお話に、さすがと感心した。
ワンタッチ洋傘の元祖だが、宣伝効果も手伝って会社の業績が急上昇するが、其の後
尊敬した経営者も48年のオイルショックで倒産してしまう、その時は夢にも思わない。
商売は難しい。人は一人では生きていけないように、商売も相手あっての仕事だから、
取引先に依っては、いつ不況とか倒産に巻き込まれないとは限らない。しかも絶えず
血液が流れるように、時期ごとに新商品を提供し続けないと、商売は止まってしまう。
最近でも「そごう」や「長崎屋」「ダイエー」など大手と取引していても、先方の都合で
こちらが廃業や倒産の憂き目にあった気の毒な同業者を見るに付け、経営の難しさを、
とても感ずる。小僧の会社も後になって、何度か傷ついたこともあったが、あの時代に
無事だった事はラッキーとしか言いようがなく、運の神様に手を合わせねばと常々思う。
未だ綱渡りの自転車操業だったが、その自転車もあのころは気持ちよく走り続けた。