ホーム慰問と音楽療法(4)

「老人ホームなんかに行くと、惚けたお婆さんわらべ歌を唄っている。子供時代に
戻って“二度わらし”になって覚えているという事は、やっぱり非常に深いところの
体に入っている、ということ」詩人・谷川俊太郎の話だが、幼い頃に覚えた童謡の
数々はその頃の出来事と重なって、その人の人生の原点を見つめているのだろう。
言葉では語れない、表現出来ないことも、歌を歌えば脳裏の中に生きてきた自分史が
風景となって現れ、脳細胞も啓発されて元気を取り戻すことも出来るのではないか。
ホーム慰問のときの曲選びも、そのあたりがポイントではないかと何時も考える。
♪「ミカンの花が咲いている 思い出の道 丘の道・・・いつか来た丘 母さんと 
 一緒にながめた あの島よ・・・」私の行ったホームで、この歌を歌ったあとに
一人のお年寄りに聞いた「昔を思い出されましたか?」ところが以外な返事だった。
「戦争を思い出しました。戦時中、空襲の時にこの歌を歌って防空壕へ入ったのよ」
人それぞれに生きてきた軌道があり、同じ歌も思い出はそれぞれに違うのは当然だが
慰問の演奏や歌ったりしながら、その人々のメモリーを大切にしてあげたいと思う。
人生を音楽に譬えれば、母から聴いた子守唄が序奏で、老いて歌うのは最終楽章かも
しれないが、より良い人生の音楽のお手伝いを出来れば、こんな嬉しいことはない。
私自身も母から聞いた「カナリア」や父が聴いていた「小さな喫茶店」など懐かしい。
三年前に大病したときも、子供の頃聞いた歌を口ずさみ、友人から戴いたCDを聴き
病の憂鬱な気分から癒されて、音楽力の持つ素晴らしさを体験したことに感謝した。
慰問には一人の時の他に千葉ギターアンサンブルさんhttp://d.hatena.ne.jp/dozzy/
千留花さんhttp://homepage3.nifty.com/circa/index.htmlと、ご一緒させていただいて
楽しんでいる。ギターをやっていて良かった。しみじみと実感する昨今だ。   了。

PS 明日より所用のため江戸を離れますので、しばらく日記を休みます。