隠居の独り言(224)

NHK大河ドラマの「功名が辻」も愈々終盤に近いが山内一豊上川隆也)と
千代(仲間由紀恵)の戦国夫婦の出世階段も登りつめて土佐一国を手にしても
振り返れば若き日々の長浜城掛川城に住んでいた頃が夫婦の最も光り輝いて
いた時代ではなかったろうか。一豊も関が原の褒美で土佐を手にした辺りから
人変わりして偉そうになっていくが「種崎浜の悲劇」はいくら戦略といえども
罪の無い一領具足たちを騙し討ちにして磔などにする仕打ちは残忍なこころの
現れとしか言いようが無い。かつて仕えた織田信長館ひろし)が比叡山
伊勢長島で行なった大虐殺を見たり、晩年の秀吉(柄本明)の関白秀次殺害、
利休切腹朝鮮侵略の残虐を目の辺りにし、家康(西田敏行)の執拗な豊臣の
滅亡戦術を見せつけられれば一豊も悪の心情に染まっていくのは避けられない。
人間の秘めた心の内の残酷劇の古今の歴史を紐解けばきりがないが、ドラマは
六平太(香川照之)が手立てを目論んで「悪役」を一手に背負い主役の一豊に
花を持たせているのはドラマのストーリーとしては仕方がないところだろう。
同じ戦国時代でも難国といわれた丹波や肥後は明智光秀加藤清正が名君とも
崇められるぐらいに治められたのに一豊には土佐の主は荷が重かっただろうか。
高知県出身の直木賞作家、坂東真砂子が「大河ドラマに騙されるな」と文章で
NHKや原作に批判をしたらしいが歴史小説は大筋では史実を変えられないが
大部分は作家好みのフィクションンの筋書きで小説はあくまでも小説だと思う。
「種崎浜の悲劇」は長い間、土佐の人たちに山内家は快くは思われなかったし
幕末に活躍をした坂本竜馬中岡慎太郎、ジョン万次郎、岩崎弥太郎などは
下積みの土佐人だったことがそれを物語っている。