隠居の独り言(284)

木村拓哉、壇れい主演の「武士の一分」が好評を得ている。物語はさておいて
武士道のありかたが今ほど問われている時はないと思う。日本人特有の美的な
感受性や情緒が崩れてしまった今だからこそ、その基本の武士道精神を育てて
これからの社会を元に取り戻して長年に培ってきた先人の美徳を見習いたい。
武士道の基本は「名誉と恥」で最近のイジメ問題など強者が弱者を苛めるのは
恥とされて、その気持ちを卑しめられた。上は下を慈しみ、下は上を敬うのが
その精神で君臣、親子、夫婦、長幼、盟友の「五倫の道」を外れては武士道の
道に反し厳しく罰せられる。その精神的素養は小さい頃から育てないと無理で
大人になれば理屈が先走って仁徳心は身に付かない。卑怯を憎む心情は武士道
そのものだが、弱いものが苛められているのを見て、見ぬふりするのも卑怯で
助ける方法を考えなくてはならない。いじめ、幼児虐待、夫婦間暴力、などは
その最たるもので最近の世相の悪化は日本独特の武士道を忘れた今の大人達の
責任でもあると思う。昔は人を理屈抜きで信用できた。家に鍵など無かったし
子供たちも親が付き添っていなくても自由に外で遊べた。子供の遊びも野原で
ガキ大将を中心に日暮れまで遊びほけていた。ガキ大将たる親分は子供なりの
義侠心があって弱いものを庇い、イジメなどは決して無かった。武士道精神は
日本人のDNAに定着して互いに譲り合い助けあって無言の和を保っていた。
その武士達は権力や教養があっても財力は求めなかった。そこがヨーロッパの
貴族との違いで金や富は卑しいものとする土壌があり道徳はそこから生まれた。
先の大戦の原因も武士道の欠落から、当時は弱かった清中国を苛めることから
始まり、結局は世界を敵に回さねばならないように、奈落の底に落ちていった。
収賄の汚い政治家、拝金主義の横行、格差社会の弊害の起因も、そこにある。
かつて世界一の治安を誇ったのは日本の武士道が基で、それをみんなが忘れている。