隠居の独り言(336)

いつもの休日は家内と小旅行を楽しんでいるが、どこへ出かけても中高年層が多く
なかでも集団の女性連れが圧倒的なのは日常の風景だ。歳を取れば統計的にも女が
多くなるのは必然としても、それにしても夫婦連れが少ないのは日本には中高年の
夫婦が一緒に出かける習慣が無いからだろう。日本の男性は女性への照れなのか
口数や話題性が少なく夫婦の会話は妻からのリアクションが圧倒的で夫は妻の話に
ただうなずくだけの味気ない生活が一般的という。統計によると暮らしのなかで
妻から夫へ不満の最たるは「夫は話をまともに聞いてくれない」なのだそうだが、
そのわりには夫が妻へ言う話し言葉はツッケンドウな口調で妻の不満もうなずける。
これでは一緒に出かけても普段の生活の延長線では妻のストレスが溜まるばかりだ。
「バスの運転手さん、髭が濃いわねぇ」「ゆうべ剃らなかったのかしら」「でもいい男」
「奥さんはどんな人かしら」他愛もない話を喋りまくり笑い声が絶えない楽しそうな
女たちだけの旅行の謎は解けてきた気がするが、これで万事がいいのだろうか。
夫は会社や外で懸命に働き体や気を使って疲労困憊して、家でのんびりしたいのに
帰宅すれば妻から近所の噂話やくだらない話の相手をさせられるのもご苦労な事だ。
まして定年後に夫が家に閉じ篭るようになるとますます空気は重苦しいものになり
それらの積み重ねが家庭内別居から熟年離婚の話まで悪循環のように発展してしまう。
世の夫達に言いたいのは奥様に笑顔で接しる、誠意を持つ、楽しさを演出するなどの
努力が必要と思うが、これも心身ともに若さと活性化につながるのは言うまでもない。
夫の妻へのいたわりも大切だが家族のために働いた夫への妻の優しさも一味ほしい。
長年暮らした夫婦には二人だけのヒストリーが蓄積されてその味は夫婦だけのものだ。
それを開花させるのも閉じるのも互いの責務だが「縁は異なもの味なもの」せっかく
長い間を歩いてきたのだから、これからもせいぜい連れ立って世の中を楽しみたい。
女性連れよりも夫婦連れのほうが旅先でも似合っている。