隠居の独り言(401)

「小諸なる古城のほとり雲白く遊子悲しむ」島崎藤村の詩はロマンティックな
イメージが沸くがこの小諸城足利時代からの名門の大井光忠が守っていたが
村上義清(永島敏行)に属し武田軍の猛攻で落城し、対越後の最前線としての
中継地として城が建て替えられ縄張りをしたのが山本勘助内野聖陽)という。
歴史は勝者によって作られるものだがNHK大河ドラマ風林火山」で信濃
長たる守護だった小笠原長時今井朋彦)は甲斐の武田晴信市川亀治郎)の
信濃侵略に塩尻峠で戦い、二年後には本拠地の林城(今の松本城)を落とされ
没落して京都へ単身逃げる。その後は同族の三好長慶を頼り、三好が滅びると
長尾景虎Gackt:ガクト)を頼り、景虎が亡くなると会津に逃げて、最後は
家臣に惨殺される運命を辿る。勝ち名乗りを上げる勝者の半面には、逃げゆく
落ち武者は哀れだが史書は残酷なまでに敗者を語らない。合戦の始末は勝者が
群がる敗者の刀剣甲冑を剥ぎ取り、名のある武将は恩賞のために首実検にされ
雑兵たちは烏や動物達の餌食となり死臭が漂いさながら地獄絵巻のさまだった。
負けた側にも家来や家族があり大人たちは殺されたり競売で奴隷とされたり
子供は下男下女に落とされた戦国無情は今では供養塔や石地蔵として風雨に
草生し晒されている。全国に今も残る哀話や遺跡は涙を誘うが人間の心の醜い
一部分を垣間見る事が出来る。先の大戦でも日本は負けた側から戦争を語り、
殆どの国は勝った側から戦争を見ている。相手と話が噛み合わないのは当然で
戦争の価値観とはそういうものだ。日本もいつまでも自虐感に酔う事はない。
ドラマは山本勘助が長く訪ねていなかった由布姫(柴本幸)と再会をするが
武田晴信が新しく側室とした於琴姫(紺野まひる)がいるとの話しを耳にして
悩みの一つがまた増える。女同士の葛藤は由布姫の男子を武田家の嫡子として
跡継ぎを狙うが果たして望みが叶うのだろうか。物語は佳境に入っていく。