隠居の独り言(508)

三月は卒業式そして別れのシーズンでもあるが、また新しい門出に向かう
人生の節目の時期で、新芽から花を咲かせる華やかな命の幕開けが始まる。
はるか遡れば自分にもそんな季節があった。今から60年前の昭和24年に
自分は姫路市立飾磨中部中学校を卒業した。中学校といえば聞こえがいいが、
当時の高等小学校(2年制)の延長で、同じ小学校の校庭の片隅にあった古い
分校のような校舎の中で勉強した生徒の一人だった。制度は戦後に633制が
新設され、その谷間にいたため新制中学校第一期生に当る。自分の学校歴は
小学校入学時は尋常小学校で3年生から国民学校に、卒業後は高等小学校から
新制中学校に変更され、しかもその間に戦争中の関連で大阪→福島→姫路と
引越しを重ねて転校が4回で学校の方針や言葉の壁などもあり、父の軍隊へ
出世の出来事もあって学校に通えない時期が多々あったのも辛い思い出だ。
でもそんな中で最高に良かった思い出は中学校卒業の時、担任の先生から
卒業式で「答辞」を読むのを指名された事で鳥肌が立つほどに震えた感動は
今になっても先生の面影とともに恩義は忘れる事は無い。父も喜んでくれ
答辞の文章を一緒に考え、父が筆で巻紙に書き込み自分に与えてくれた。
講堂の壇上で読んだ記憶は薄れたが、学校生活の最後を飾る卒業式の模様は
おぼろげに蘇える。学生時代の唯一の誇れる話はそれだけだが自分の学歴は
ここで終わり、すぐに上京して働き、その後の長い歳月が流れたが、今では
すっかり江戸っ子の気分で暮らしている。