隠居の独り言(534)

ギターを趣味として今年で20年になるが、自分の技量が一向に上がらないのは
才能が無かったものと諦めるとして悔しさはないが、いい仲間が多く出来たのと
世間が広くなったのが最高の収穫だ。なかには夫婦が同じギターが趣味で二人が
仲良くデュエットを組んでいられる方もいるが何とも妬ましく思うこともある。
残念ながら我が家は同床異夢でヤマノカミ殿は人形つくりや、ちぎり絵などの
静かな部屋の手先仕事が好みで、下手なギターはノイズとしか聞こえないらしい。
練習をするにも相手が買い物などで留守のときとか、入浴の時間を見計らって
集中的にやるしかない。ともかく趣味の違いは如何ともし難く互いが好きな道を
続けるには相手を気遣い思いやりを持たないと頓挫してしまう。それだからって
仲の善し悪しとはまるで関係無いのだから夫婦とは摩訶不思議なものだと思う。
吉田茂の腹心で実業家だった白洲次郎は奥方と仲が良かったので記者の質問に
夫婦円満の秘訣は、いつも一緒に居ない事だよ」と語ったが、的を射た表現だ。
つまり夫婦同業同趣味であれば仲がいいとは限らない。芸能人同士の離婚騒動は
日常茶飯事だし、それを勲章のように思っている有名人も少なくないのも事実だ。
明治の文人与謝野鉄幹は「妻を娶らば才長けて見目麗しく情けある」と歌ったが
男ならどうせ嫁さんを貰うなら凡庸な女性よりも才色兼備で美人なら言う事はない。
鉄幹の妻は言うまでもなく与謝野昌子だが歌集「みだれ髪」の刊行で有名になり
新聞雑誌から次々と原稿依頼が舞い込んできて鉄幹の名声を遥かに追い越したが
ために彼は辛く肩身の狭い思いをしたに違いない。結婚をしてから妻のほうが
圧倒的に成功すれば夫、つまり男として立場が無くなると考えるのは古いのか。
例えば世界的なギタリストで美貌の村治佳織はどういう男と結婚をするのか、
気になるところだが生半可な男では務まらないだろう。べつに有名人でなくても
最近ではキャリア・ウーマンの妻が仕事の上でも夫より成功する例がますます
増えてきている。それにたいして男が耐えられるのか、気になるところだ。