隠居の独り言(537)

最近のペットブームは犬猫合わせて5000万匹が飼われている数字で産業的にも
5兆円以上のベースは日本の防衛予算を超えているというからブームは凄まじい。
その昔、徳川5代将軍綱吉によって出された「生類憐みの令」で犬や猫が大切に
された時代があったが現代の「お犬様」は、その当時以上の待遇を受けている。
自分は犬も猫も好きだし動物は嫌いではないのだが、なぜか飼うチャンスがない。
都市部の狭い住宅ではペットも窮屈だろうし今の孫との暮らしでは叶えられない。
夕方、近くの公園には犬の散歩で愛犬家たちが多く集まるがどの人も家族同様に
犬を愛しているのを見て微笑ましく思うのは、同じ世代に生きた幸せを人も犬も
同じく分かち合っているからだろうか。自分のペット飼育記は商売を始めた頃に
友人が田舎に帰るというので彼が飼っていたインコを貰い受けたことがあった。
今のようにペット用品店もなく餌も売っていなかったが飯の残りでいいとの事で
適当に与えていたが、とても可愛い奴で自分の掌や肩に乗って仕事中のひと時も
離れずに懐いていた。この緑色のインコの人懐かしい習性は本来の本能なのか、
それとも淋しがり屋なのか、当時独身の自分には無二の家族が出きた気がした。
夜のインコは友人が置いていった古い籠の中で休み、朝はインコの声で自分が
目が覚めるといった二人?の蜜月の仲だったが残念ながら長続きはしなかった。
自分の不注意だったのかもしれない。寒い冬の朝にインコは籠の中で死んでいた。
考えてみればインコは熱帯の動物で寒さには滅法弱い。その夜は、何時も仕事に
使ったガスの空気の入れ替えに窓を開けるのだが、その夜に限って眠ってしまい
ひと晩中閉めるのを忘れてしまい、インコはひとり淋しく冷たい骸になっていた。
僅か半年の付き合いだったが親しい友だちを失った気がして、しばし気の抜けた
記憶が今もときに蘇える。楽しい日々もいつか別れがやってくるがペットの死は
突然やってくるので、たとえ小さな生き物でもそれに直面するのは耐えられない。
ペットといえば今は金魚とメダカだけ、それでも彼らは気分を和ませてくれる。