隠居の独り言(539)

気象庁は2日に関東甲信、東海、近畿が梅雨入りしたと見られると発表した。
いずれの地方も平年に比べて一週間ほど早いらしい。梅雨というと憂鬱とか、
気が重いとか、ジメジメとか、ムシムシとか、四季のなかでも、あまりいい
イメージはないが、呼び名では入梅、長雨、五月雨、樹雨、青葉雨、青梅雨、
小糠雨、走り梅雨、迎え梅雨、卯の花腐し、天候不順の折など、いい言葉だ。
五月は暑い日も寒い日もあり天気が落ち着かなかったが梅雨に入ってやっと
気分が収まった。歳を取ったせいか、それとも天邪鬼か、自分はこの季節が
とても好きだ。元来が荒れ肌性なのであまり汗はかかないし湿り気の空気は
喉にもよく趣味の歌も声がなめらかに通る気がする。昭和初めの子供の頃は
ガキ仲間で外の遊びが多かったので、六月は雨が長いのが憂鬱の種だったが、
現代の子供達はTVや液晶ゲームなどの家の中の遊びが多く梅雨とは無縁で、
まして少子化のせいで子供同士の交流が少ないのは淋しい。それはともかく
雨に濡れて花々が生き生きとしてきた。アジサイハナショウブスイレン
バラ、タイサンボク、ホタルブクロ、ツユクサ等のしっとり濡れた花びらは
艶やかな女性の美しさを連想するは季節が織りなす幻なのか。六月は女性が
きれいになるという。湿った空気が素肌をうるおすからなのか・・それとも
薄着の姿がまぶしく映るからなのか・・「夜目・遠目・笠の内」は実際よりも
良く見える例えだが雨傘をさす女性はなんとなく美しくみえるから不思議だ。
♪あめあめふれふれ母さんが、蛇の目でお迎え嬉しいな・・蛇の目の風情は
遠い昔だが、今では雨が降らなくても折り畳み傘は常にカバンに入っている。
長い人生の走馬灯が梅雨空に回っている。便利な世の中になったものだ。