隠居の独り言(560)

教育の根幹を揺るがす事件の発覚は、以前から薄々は感じていたけれど、ここまで
ひどいとは呆れてしまう。大分の教員採用試験をめぐる汚職事件は合格して採用の
教員の半数が不正合格だったというから、先生の半分は教える資格が無いといえる。
それでなくても「ゆとり教育」による授業時間の短縮、教師の質の問題など教育を
取り巻く環境が、明治以来で最も悪いとされているのが、うなずける気がしてくる。
これは教職員のモラル以前の事で人を教える立場にある人間が、自らが利己主義で
保身的なのは悪人に子供を預けているようなもので文科省の縦割り構造を根本から
直さないと長く培われた世界に誇る日本の教育立国が崩れていく。教員採用試験の
システムは全国同じだと思うが、一次は筆記試験で、二次は面接となっているが
一次で合格ラインに達しないと二次は受けられない。二次の面接でツテの取沙汰が
問題になっているのに一次の筆記試験で点数を改竄されたというから、何のための
教員試験なのか、受験者たちはいい面の皮だ。古い話だが子供も二次で撥ねられて、
それなりの器量が無かったと当時は諦めたが今度の事件を聞いて何か釈然としない。
先生の給料は、かつて田中内閣の時に、いい人材を集めるために地方公務員よりも
10-20%高く設定され、以後は下がってはきたが今でも5-10%は高くなっている。
うがった見方だが先生を体験した者は自分の子を継がせようとする気は頷けるが
例えば政治家、資産家、医者、企業経営者などと違って教育は人作りの基本部分で
いい思いをしたからと一緒にされてはたまらない。師弟の間柄は信頼が大切なのは
言うまでもないが、15歳の女子の父親殺人や14歳の少年のバスハイジャック等の
あってはならない事件も、先生という最も近い大人に何故相談出来なかったのか、
教育の腐敗の被害者が事件を起こしてしまった少年少女だった思いがしてくる。
文部科学省はこの際、徹底的に調べて資格の無い人を即刻辞めさせ、不正な減点で
不採用になった優秀な人材を採用するよう努力する。ひとつの提案だが試験方法を
根本から変えて筆記試験の後は全員を代用教員として雇い、実務や子供達への接触
ボランティアなどを体験して、数年後にPTAや生徒達の評価で正式に採用すれば
試験の公平さと気概ある先生が生まれるのではないか。机上の勉強と、コネだけで
社会の仕組みや荒波も体験をしないで、子供を教える先生の資格があるのだろうか。
この際、文科省の猛省を促したい。