隠居の独り言(562)

NHK大河ドラマ篤姫」は、父・斉彬(高橋英樹)、夫・家定(堺雅人)の死で
ひとまず前半が終え、未亡人となった篤姫は落飾して天璋院宮崎あおい)となる。
政界のほうも大きな曲がり角を迎え、大老井伊直弼中村梅雀)が勅許を待たず
日米修交通商条約の調印に踏み切って世間は大騒ぎになっていくが、考えてみれば
鎖国する時は勅許の奏請など聞いたことも無く、幕府の権威も堕ちていたのだろう。
黒船来航以来の日本は「井の中の蛙」で外国の実力もまるで知らずに接触を嫌って
一戦も辞さない攘夷派が大部分を占め、とくに朝廷のおわす京都では攘夷過激派が
我が物顔で暗躍し治安は極度に乱れていた。天皇には異国の事は何も知らされずに
異国=悪だったから勅許の降りるはずがなかった。例え開国派といえども表面的は
攘夷を謳わねばならない状況だったが横車を押してまで、なぜ直弼は調印したのか。
隣国・清がアロー戦争で欧米から武力で侵略されているのを知って日本の危機を
感じたのが最な理由であったろう。同時に直弼は将軍家茂(松田翔太)就任に伴い
一橋派らの大処分を行なう。容疑は幕府転覆未遂で、いわゆる「安政の大獄」だが
対象者は水戸の斉昭(江守徹)や慶喜平岳大)を始めとして一橋派の松平春嶽
伊達宗城山内容堂などの大名、近衛忠熙春風亭小朝)などの公卿たちは謹慎、
蟄居を命じられ、優秀な人物の橋本佐内、鵜飼幸吉、頼三樹三郎吉田松陰などが
処刑されたが思想弾圧というより直弼の一橋派への憎悪が絡んだ残忍な復讐劇だった。
西郷(小澤征悦)も追求されて、清水寺月照高橋長英)と共に薩摩に逃れるが
実権を握っていた斉興(長門裕之)が捕らえる。帯刀(瑛太)大久保(原田泰造)は
二人を逃がそうとするが帯刀らに迷惑がかからないようにと海に投身自殺を図る。
月照は亡くなり西郷は助かるが、奄美政治犯として護送されることになる。