隠居の独り言(590)

好きな趣味はラテン音楽のギター弾き語りだが民族の気質なのかラテンの歌は
恋に関するものが多くそれも男が女に捨てられた「泣き節」が大部分を占める。
現在、練習中の歌の一つは「MIS NOCHES SIN TI・君偲ぶ夜」だが、歌詞は
Sufro al pensar que el destino logro separarnos guardo tan bellos recuerdos
que no olvidare・・運命が僕達を引き離してしまったがそれを考えれば悲しい。
忘れもしないあの素敵な思い出を大事に閉まってある・・恋人に振られた後の
未練がましい歌だが何時も思うのは総じて女性より男性の方が恋にだらしない。
今までの少ない体験と音楽を通じて思うのだが男性は過去を引きずるというか、
男のロマンティシズムの本体は未練から生まれているものといって過言でない。
それは洋の東西を問わずラテンの歌も日本の演歌も同じで未練たっぷりの歌が
多いのは作詞家の多くが男性で、女性に歌わせて過去の哀惜を代弁させるのが
演歌の定番といえる。女性作詞家の例えば岩谷時子阿木燿子山口洋子等の
男女の別れの歌は悲しみの中にも未来の望みを残して恋の未練を感じさせない。
うらみつらみは男の本性のようで、しばしば世間を騒がせる離婚後の事件簿も
加害者の殆どが男なのは強がりを言っても所詮は甘ったれの未練心に過ぎない。
男は一見体格から強そうに見えても気持ちは過敏でひ弱で女よりはるかに弱い。
対して女性は一旦別れると決めたら心身共に愛を完全に切り捨てて去っていく。
もちろん戻ることなんてありえないし次に新しい人生に進むことが出来るのは
女のロマンチシズムは未来形で男のロマンチシズムは過去形のものなのだろう。
考えればオペラも歌曲も民謡も演歌も悲劇的な切々とした失恋の歌が多いのは
心に潜む悲しみと惨めさが歌わせているもので聴くものにとって胸を打たれる。
音楽を通じて男と女の葛藤を垣間見る思いがするが、どんな名演奏を聴いても、
若い天才の技巧より、様々な苦しい体験を積み重ねた人ほど味が出ているのは
人生を感じるし、熟成されたワインのようなものだろう。