隠居の独り言(641)

派遣切りの話が日常会話のように連日に報道されているが急激な景気の後退は
底が見えない。日本を背負ってきた自動車・電機・鉄鋼・精密など上場企業の
3月決算は3割超の大幅な経常減益となる見通しで総崩れの様相を見せている。
日本のメーカーの全てが赤字になってもおかしくないというから事態は深刻だ。
製造業の減産は「川上」の素材産業を直撃し「川下」の流通業界に大きく響く。
追い討ちをかけたのが円高で、1円高トヨタは400億、ソニーは1900億の
利益が飛んでしまうから凄まじいが、これら全製造業で働く派遣や業務請負
非正規労働者のうち3月末までに40-50万人が失業するという。派遣の4人に
1人が影響を受けるわけだが日本の労働市場はどうなってしまうのだろうか。
平成21年度の春闘の幕開けが来月10日に控え総連や各企業の労働組合などは
賃上げを要求する方針を決めているそうだが時代錯誤もいいところで、不況に
適合する常識が無いどころか、会社の苦境や同僚として働き派遣切りにあった
人たちへの同情心のひとかけらも無い。この際、ワークシェアリングの導入を
進める事が肝心で会社に関る人全てが痛みを分かち合う互いの人情味が欲しい。
例えば株主には配当を減らしてもらう、役員報酬は半分以下にする、正社員は
一律10%カットする、派遣切りを止めて最低賃金法に基づくものにする・・
政治も真面目な会社には法人税率を下げるぐらいの英断が欲しいところだ。
一方で農業、林業、養護、サービスなどの人手不足の分野も多いが労働市場
分散化が望まれる。ましてその方面に外国人労働者を導入する意見は論外だ。
今、若い人たちに考えてもらいたいのは日本には昔から長い修業時代を経る
職種がたくさんあった。いわゆる職人で、苦労の先は自らの世界を将来に亘り
築ける事が出来、生涯現役で働ける喜びと収入が確実に持てる誇りがある。
我が国が長い間、技術立国であったのも職人の技術が基にあったからこそで、
それを忘れては日本の将来が無い。派遣先の仕事の大半は素人の時間給だが、
職人は玄人であり年季の入った技量は絶対に忘れない。努力は必ず報われる。
100年に一度の不況の今だからこそ教訓にして欲しい。