隠居の独り言(647)

昨日は母の七回忌で実家の姫路市に兄妹全員が集まり仏壇の前でお坊さんに
法要をしてもらった。母は6年前に老衰で92年の生涯を閉じたが後半生の
30年以上もスモンという病のために寝たきりの生活を余儀なくされた。
薬害は憎むべきだが、見舞うと母はいつも課せられた重荷は自分ひとりが
背負えばいいと子供達を逆に励ましてくれた。思い出す度にもっと親孝行
しておけばよかった、心は今も苛まれるが後悔はいつでも後でやってくる。
親とは有難いもの、子への愛は無償であり、けっして「返し」を求めない。
「親思う、心にまさる親心、きょうの音つれ何と聞くらん」と辞世の句を
残したのは幕末期に刑死した吉田松陰だが、古今東西生きとし生きるもの
親と子に共通するのは、いつも切なく遣る瀬ない濃厚な情念そのものだ。
NHK大河ドラマ天地人」第7回「母の願い」は、まさにテーマの如く
親子の間の感情を描いたものでドラマといえ観る者の心根がつまされる。
上杉謙信阿部寛)に蟄居を命じられた兼続(妻夫木聡)は故郷・上田庄の
雲洞庵にこもり自らを見つめていた。そこに与七(小泉孝太郎)が訪ね来て
母・お藤の容態がよくないという。家に帰るよう説得されても謙信への忠と
母への孝のハザマで兼続は思い悩む。武士を志した者の辛さなのだろうが
いつかは直面しなければならない親の死の悲しみは反面に自らを強くする
節目を親が子に与えてくれたものだと思う。かたや上杉の重臣直江景綱
宍戸錠)は戦に参加できない事を謙信に詫びるが、逆に景綱こそ第一の
家臣と労われる。その三日後に景綱が亡くなってしまう。人間の生老病死
しみじみと感じさせる今回のドラマは大河を忘れさせるが流石は役者揃いで
景綱の妻・お万(満田久子)娘・お船常盤貴子)、お悠(吉瀬美智子)等
労わりの演技が素晴らしい。今の戦局は東に北條、西に織田、南に武田と
三方面から虎視眈々と越後を狙われている。