隠居の独り言(656)

戦国時代を生きるには優秀な指導者を仰ぐことは必須条件だが越後の偉大な
謙信(阿部寛)の急死は人々を混乱させた。独裁者謙信が後継者を決めずに
他界したことが上杉家を迷わせる。直江兼続妻夫木聡)が主君として仕える
景勝(北村一輝)と、北條家から来た景虎玉山鉄二)の二人の養子による
跡目相続争いは機を待っていたかのように多くの親族・家臣を巻き込んでいく。
思うに、謙信は景虎には関東の経営を任せ景勝には越後・北陸方面を支配させ
自身は上洛して足利幕府の顧問などを務めようとしていたに違いない。謙信と
二人の養子では、景勝は姉の子、景虎は血縁関係の無い他人で、しかも実家の
北條とは敵対関係にあったので例え遺言が無くても景勝が相続者とみなすのが
常識的な判断だが、上杉家は二派に分かれて二分し崩壊の危機に面してしまう。
謙信の信じた“義”の精神は脆くも崩れた感じだが食うか食われるかの時代に
謙信という個人を信頼しても亡くなれば上杉家には思い入れも無かっただろう。
家臣・家来にとって最も大切なものは先祖代々受け継がれた自身の領地であり
増やす事であり、主君を間違えれば家の存亡にかかわる。仕える事の難しさは
主君と崇める人の適格者として見きわめる事が生きるうえで必須条件であった。
主従関係は江戸時代になって定められていくが、戦国はシビアなものであった。
大河ドラマ天地人」は、謙信の遺言を不審に思った上杉家の重臣柿崎晴家
角田信朗)は景勝に夜討ちを仕掛けるが泉沢(東幹久)に切られ絶命する。
景勝の家臣は景虎の仕組んだことではないかと疑うが景虎が現れ潔白を訴える。
それでもしつこく問い詰める兼続に、景虎は自尊心を深く傷つけられてしまう。
お船常盤貴子)は兼続に景虎が腹を立てている事を伝え、景虎をおろそかに
してはいけないと忠告する。