隠居の独り言(673)

人気お笑いコンビ・ハリセンボンの一人箕輪はるかが肺結核のため入院したことで
結核への関心が高まっている。吉本興業に所属してコンビと接していた志村けん
東国原英夫知事も検診を受けたそうだが結核は依然として日本では最多の感染症
過去の病気ではない事を忘れてはいけないと思う。結核はかつて国民病ともいわれ
多数の患者が発生し不治の病として恐れられた。滝廉太郎石川啄木樋口一葉
正岡子規竹久夢二等々、一昔前まで結核で夭折した著名人は枚挙をいとまないが
最近は栄養や公衆衛生の改善、新薬の開発など国をあげての取り組みで激減した。
それでも昭和30年代では4人に1の確率で罹患していた。自分も25歳の晩秋に
突然胸が苦しくなり近くの医院に走ったが「結核自然気胸」と診断され即入院で
千葉市稲毛の額田病院で2年近い療養を余儀なくされた。親戚に結核で亡くなった
数人がいて嫌な予感が胸をよぎり、その時の焦燥と絶望感は言葉に言い尽くせない。
慰めてくれたのは病院から見える景色で当時の稲毛は青松白砂の風光明媚な海岸で
晴れた日の夕方など、海と空が夕陽に映えて紅赤色に染まり八双屏風の絵のような
幻想的な風景は、病みに萎えた心を和ませてくれた。景色はいいのだが、病院食は
食糧難からか、いまひとつで患者の中には自炊も多く貧乏な自分は同室の方から
肉類を頂いた嬉しさは地獄に仏だったが、その方が旅立たれた場景は今も忘れない。
患者は徐々に衰弱し肌が蝋のように白くなって悲壮感をかもしだす・・悲しかった。
報道を聞くにつけ結核は遠い病気ではない。あれから劇的に治療法の進んだ今でも
過度の恐れは無いが油断は絶対禁物で、どこに病魔が潜んでいるか分からないが
年一回の胸のレントゲン検査を受けていれば大丈夫で早期発見で100%完治する。
現代の国民病は言うまでもなくガンだが、原因も治療法も100%の期待はまだだ。
結核を追放したように、近未来にガンも人類から駆逐したいものと願っている。