隠居の独り言(844)

先日、芸能リポーター梨元勝さんが肺ガンのため65歳の短い生涯を終えた。
6月初め医師から肺ガンの告知を受けたというが煙草を吸わない梨元さんには
信じられない思いと、早く発見出来なかった悔しさに気持ちが一瞬凍りついて
張り裂ける絶望感に苛まれたに違いない。それでも梨元さんは回復に心がけて
抗がん剤を服用し副作用で髪の毛が抜け痩せ細っている自らの姿を晒しながら
「同じ闘病者の方々への励ましになれば」と最期まで芸能情報のリポートをし
亡くなる2日前にも萩原健一冨田リカとの交際云々の報道をしたというから
リポーターの仕事に賭ける一徹さと強靭な精神力には驚きと敬服の言葉を失う。
企業戦士として戦場で散った男の誉れは彼の望むところで悔いはないだろう。
今の病院はガンの告知を本人に伝えるのが殆どだ。それでも梨元さんのように
強く生きられる人はそれなりの覚悟と自身の始末を考えられるが告知に対して
耐えられない人には残酷としかいいようがない。ガンの告知を考えさせられる。
大抵の患者は病気を治してもらえると信じているから病院で診察を受けている。
しかしガンの場合は治ると信じたいが治るか治らないか実は医者も分からない。
病院は最先端治療を施し、患者は苦しい抗がん剤を服用するのも生きる執着だ。
医者にとっては患者に最善の努力をしても治らずに死んでしまうかもしれない。
だから告知する。告知がその人の残された人生を有意義に生かされれば幸いだ。
自分もかつて前立腺ガンの告知を受けて狂いそうな気持ちの動揺を味わったが
そもそも医療の進歩とは生老病死の天地の自然と戦うようなものだと実感する。
日本人の平均寿命は世界一の寿と言われても、百歳を過ぎて元気な人、反面に
若くて病む人、不幸に命を落とす人、その不条理の謎はまだ解明されていない。
でも誰もがいつか天地の自然からの、お裁きでこの世から去る日がやってくる。
体は自然だから年齢で変化する、そしてやがて壊れる、これが天地自然の掟だ。
生きる指標を示してくれた梨元氏に感謝したい。合掌!