隠居の独り言(915)

先週の大河ドラマは大震災のため放映中止になったが、それで良かったと思う。
市(鈴木保奈美)が柴田勝家(大地康雄)と北ノ庄で暮らしたのは、それほど勝家を
愛していたのか?それとも秀吉(岸谷五朗)の好色を嫌っての憎しみだったのか?
兄・信長(豊川悦司)によって政略結婚を強いられ、それでも嫁ぎ先の浅井長政
睦ましく二男三女を儲け幸せを掴んだのも束の間、信長により長政は滅ぼされ
小谷落城の時には長男の万福丸は秀吉によって残酷な串刺しの刑に処せられた。
市にとって秀吉は憎んでも憎み切れない。封建時代の女性の運命は政略のため
利用され自らが結婚相手を求めることは滅多に許されなかったが信長亡きあと
市は秀吉憎しの感情で、好きでもない勝家に嫁いだのが本心だろう。親子でも
兄弟でも殺しあった戦国期は仕えた主人の意のままに負ければ主人に殉教する。
日本人にとって「個人」は明治になり西洋近代思想が入ってからだが戦国期に
女の人権など有ろうはずもなく、市の信念を通すには勝家との結婚だけだった。
名誉を重んじて死を選ぶのは三姉妹の長女・茶々(後の淀君)が大阪夏の陣
家康に盾ついて子の秀頼と共に大阪城で散ったのも親子の悲しい運命なのか。
大河ドラマは近江の山岳地帯で勝家軍と秀吉軍のにらみ合いはひと月余り続く。
勝機に焦る佐久間盛政(山田純大)の失態をきっかけに勝家は賤ケ岳合戦に敗れ
全軍は北庄城へと敗走する。迎える市と三姉妹に勝家は城から逃げるようにと
頼むが市はこれを拒否。江(上野樹里)たち三姉妹に対して、これからは秀吉に
世話になるように遺言し、勝家と潔く自刃するが女の意地を見る思いがした。
「さらぬだに うちぬる程も夏の夜の別れを誘う ほととぎすかな」市の辞世の句