隠居の独り言(1062)

「わたしこと来年三月年季があけ候えば、あなたさまと夫婦になること実正なり」
遊女からこんな起請文を貰った男だが、友人二人も全く同じ起請文を持っていた。
けしからんと三人で遊女のもとへ押しかける・・おなじみ「三枚起請」と落語だが
実際に遊郭では男に身請けして貰うために、この手の起請文はよく書かれたという。
なにやら野田首相の政治手法は野党に擦り寄り、と思えば小沢一郎にご機嫌取りで
党内の反対派を宥めたりして、あちら立てればこちらが立たず。まさに三枚起請だ。
消費税増税の実現のため政治生命を懸けるとタンカを切った野田佳彦首相だったが
先の衆院選での民主党マニフェストのどこにも消費税増税は書かれていなかった。
一方野党の自民党は以前から社会保障制度をしっかりとするために消費税引き上げは
当然と公約してきた。マニフェストというのは国民に対する起請文であって消費税を
謳わなかった民主党がここにきて自民党や他野党に頭を下げるのも仕方ないだろう。
遊女の「三枚起請」のように気軽にマニフェストを乱発して騙された国民のほうが
馬鹿だったということになるが今さら嘆いても仕方ない。民主党マニフェスト
女を口説く裏付けのないプレイボーイのセリフのようで心もとない。足元ばかりの
数値目標だけで「あれもこれもタダにする」の甘言に騙された。忘れてならないのは
中国や北朝鮮が核ミサイルを日本に向けているのに我が国の防衛をどう考えるのか?
そんな最重要問題にマニフェストが触れないのは国民を愚弄しているとしか思えない。
国債が1000兆円に達し国家財政の首が回らないのに国民の歓心を買うマニフェスト
もうやめよう。国民が熱烈に支持して何年後かに国が滅んでしまった事だってある。
前大戦のドイツや日本がそうだった。政治は国民に耐乏生活を強いることもあるし
ときには嘘を付いても国民を欺いても100年の計を持つことこそ真の政治家と思う。
国債、外交、原発等々、今は未曾有の国難なのに与野党ともに党利党略に走るのは
みっともない。このさい衆院解散がベストで国会が停滞するのは政党の衰退どころか
日本が滅びてしまう。